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3-4 意識の追跡 [アストラルコントロール]

「わかりました。協力します。でも、何をすればいいんですか?」
零士が訊いた。
「別に特別なことをしてもらうわけじゃないわ。いつも通りに生活してもらえば。ただ、あなたの思念波は常にキャッチされている。それだけは理解しておいてほしい。それと、あなたの周囲で常に私たちが監視しているということも了解してほしいの。」
「了解するほかないようですね。」とあきらめ顔で零士が答えた。
「ありがとう。じゃあ、これで失礼するわ。」
剣崎が一方的に話を決めて、三人は部屋を出て行った。
剣崎とレイ、マリアが署を出ると、そこには例のトレーラーが待っていた。三人が乗り込むとすぐにその場を離れた。
「どう感じた?」
剣崎が訊く。
「近くにアストラルコントロール能力を持つ者がいる。」
そう答えたのは、マリアの中にいる伊尾木だった。
伊尾木は総帥との争いのあと、マリアの体に入っていた。彼こそ、高いレベルのアストラルコントロール能力を持つ者だった。その挙句、自らの肉体を失ったのだった。
「確かに、あの残骸は他人を操った後の思念波のもの。時限爆弾のような感じがしたわ。」
剣崎が推察する。
「しかし、なぜ、そんなことをするのか。結果的に事件解決になっているんだから、ある意味、正義のヒーローを作っているようなものよね。」
剣崎も少し呆れたように言った。
「でも、何度も繰り返すと、射場さんは肉体を失うわ。彼の場合、それは死を意味するでしょ。」
レイが心配そうに言う。
「次は死んじゃうかも。」
マリアも心配そうに言った。
「彼を救う方法を考えなくちゃね。」と、レイがマリアを宥めるように言った
剣崎が言う。
「レイさん、今、射場さんはどこにいる?」
レイは、署を出た後も零士の思念波をキャッチしている。以前は、かなり消耗する行為だったが、マリアや伊尾木が傍にいて、ターゲットの思念波を増幅する役割を担うことができ、今では、特に集中しなくても、キャッチできるようになっていた。
「今から署を出るところね。・・・どうやら、五十嵐さんのマンションに行くみたい。」
「そう。やはり、あの二人はそういう仲だったのね。」
「どうかしら・・五十嵐さんはかなり射場さんにぞっこんのようだけど、射場さんは・・迷ってるみたいね。・・なんだか、一樹と亜美さんみたいだわ。」
レイがそう言うと、みんな可笑しくなって噴き出した。
「トレーラーをマンションへ!」
剣崎が言うと、ゆっくりと動き始めた。都会の道路では、大型トレーラーを容易に駐車できるところは少ない。
「ここね。」
剣崎はセキュリティロックのキーボードにそっと触れた。五十嵐が戻ってきたときの映像が浮かぶ。
「今日はこのままここで過ごすようですね。」
レイが剣崎に言う。思念波を通じて二人の会話がキャッチできる。
「そう。」
剣崎はそう言うと、レイとともにトレーラーに戻った。
「明日からしっかり監視しましょう。どこかできっと、接触して来るはずだから。マリアちゃん、疲れてない?」
剣崎が訊く。
「大丈夫です。・・ああ、おじさんが、ひとつ気になったことがあるって・・。」
そこから声が伊尾木に変わる。
「射場の魂が、今まで何度も、アストラルしたことでかなり弱っている。このままだとかなり危ない。後、何回耐えられるか判らない状態だ。何としても食い止めねばならない。」

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