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2-24 有栖川 [アストラルコントロール]

五十嵐と零士は、コンビニ店に入り、雄一郎の写真を見せて来店したかを尋ねた。
「いえ、見たことはありません。」
「この人が定期的に買い物に来ているはずなんだけど、覚えていない?」
と五十嵐が、再度確認する。
「いえ、見たことはないと思います。」と店員は答える。
そのやり取りを聞いていた零士が口を開く。
「この中で、赤い髪の女性を知っている人はいないかい?」
一瞬、店員みんなの顔が強張り、口を噤む。
「どうした?」と零士が、一番近くにいた女性店員に訊く。
「赤い髪の女性って、毎週二度ほど来られるお客様のことですよね。」
女性店員は、確認するように言った。
「毎週来ている?知ってることを話して!」と五十嵐は詰め寄る。
横で聞いていた店員が間に入る。
「すみません。彼女は被害者なんです。」
「被害者?」と五十嵐。
「ええ、赤い髪の女性は彼がシフトに入っている時だけ来店されて、しばらく、店の外からじっと彼女を見ているんです。そして、レジに彼女一人になったところで、店内に入って、たばこを一つ買っていくんです。」
と店員が話した。
「前に事情を聴きに来た時はそんな話は出なかったと思うが・。」と零士。
「特に何かをするわけでもないし、定期的に来店されるお客様は多いんです。毎日、同じ時間に来て缶コーヒー一つ買って、レジが見える場所でゆっくりと飲んでいるという方もいらっしゃいます。気概があるわけでもないし、同じような行動を取られる方がいる中で、赤い髪の女性が異常だとはいいづらくて・・。でも、彼女にはそれがストレスだったんです。じっと見つめて・・いや、睨みつけるような視線を感じて、レジ前でじっと見ている。声も出さず、たばこを指さして、お金を払って帰っていく。タバコは目的というより、彼女に会いに来るという感じで。とにかく、薄気味悪くて。先日、そのこともお話しすべきか考えましたが、止めておきました。」
先ほどの店員は震えているように見えた。
それを先輩らしき店員が宥めるしぐさを見せた。
「もう一度、訊くが、この男性を知らないか?」と零士。
雄一郎の写真を見せて訊いた。震えていた店員は首を横に振る。
零士はふと、店員が付けている名札を見た。
「君、名前は?」
「有栖川です。」
それを聞いて五十嵐が反応する。
「有栖川?・・ねえ、あなたの親戚で、登山中に亡くなった女性はいない?」
突然訊かれて、有栖川という女性店員は驚いた。
「どうして、それを?・・私の叔母にあたる人が、学生のころ山で事故にあって亡くなったと聞いたことがあります。まだ、私が生まれたばかりだったはず。母が教えてくれたんですが・・そんな昔のこと、どうして?」
有栖川はただ驚いていた。
「ありがとう。また話を聞かせてください。」
五十嵐は、そう告げて、零士とともに店の外に出た。
「なんとなくつながってきたわね。」
五十嵐は徐々に核心に近づいている実感があった。しばらく、五十嵐と零士は、雄一郎が現れるかもしれないと考えて、店外の暗がりで待つことにした。1時間が過ぎて、日付が変わっても雄一郎は現れなかった。
目の前を赤色灯をつけたパトカーが何台も走っていく。同時に、五十嵐のスマホが鳴った。
「山崎さんからだわ。」
すぐに出ると、「わかりました。近くにいるのですぐに向かいます。」と返答した。
「どうした?」
「公園の茂みの中で遺体が見つかったの。行かなくちゃ。」
「僕も行く。」
二人は急いで現場に向かった。

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