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3-21 踏み込む [アストラルコントロール]

山崎と五十嵐は、結城の別荘に到着した。インターホンを鳴らしたが返答はない。大きなガレージには車はなかった。山崎が門を開けて、中に入る。玄関には鍵が掛かっている。仕方なく、ガレージを抜けて、庭に入ってみた。部屋の明かりはついている。山崎と五十嵐は、中の様子を確認しようと、窓に近づいてみた。
「あっ!」
五十嵐が、リビングの大きなガラスサッシ越しに、加茂正氏を見つけた。
「山崎さん、あれを!」
五十嵐に促され、山崎もリビングの大きなガラスサッシから中を見る。首を吊っている加茂正氏の姿を確認した。
「五十嵐救急車だ!」
山崎はそう言ってから、周囲を見回し、大きめの石を見つけてガラスサッシに投げつける。ガラスが割れて飛び散り、鍵を開けて中へ入る。加茂正氏の体に近づき、状態を確認する。
「亡くなっている・・。」
山崎はそう言うと、スマホを取り出し、首を吊った状態の加茂正氏を写真に収めた。それから、椅子を持ってきて、ゆっくりと正氏の遺体を床に降ろした。ほんの数分で救急車が到着し、救急隊員が状態を確認した。
「首を吊ってから、かなり時間が経っているようですね・・。鑑識を呼んでください。」
救急隊員はそう言うと、すぐに引き上げて行った。
鑑識班が到着するまで、山崎と五十嵐は外に出た。現場を荒らさないようにするためだった。
そこへ、結城が戻ってきた。
「何かあったんですか?」
「加茂正氏が亡くなっていました・・。」
「亡くなったって・・どういうことですか?誰かに殺されたんですか?」
結城はそう言って別荘の中へ入ろうとするが、山崎が制止した。
「現場を荒らしたくないので・・亡くなってから随分時間が経っています。あなたはどちらに?」
山崎が訊いた。
「ここに、議員を送ってから、先ほどまで、党の県本部へ行っていました。事情を説明し、除名を取り下げてもらうようお願いにあがっておりました。」
結城は中の様子が気になるようで、視線はずっと別荘の中に向いていた。
ほどなく、鑑識が到着し、別荘には規制線が貼られた。1時間程で、ようやく、加茂正氏の遺体が運び出された。
「念のため、解剖に回しますが宜しいでしょうか?」
山崎が結城に訊く。
「ええ、お願いします。」
結城氏はそう答えた。正氏の遺体が車に乗せられると、結城は思わず蹲り、「どうしてこんなことに・・。」と小さくつぶやいた。
鑑識による検証が終わってから、ようやく、結城や山崎たちが別荘の中に入った。結城はリビングに入ると、部屋の荒れように驚いた。
「あの部屋で首を吊って亡くなっていました。」
五十嵐が発見した状況を説明した。
「自殺のようですが・・。」と五十嵐が言うと、結城は頭を抱えて、ソファに座り込んだ。
「議員は、例のSNS情報でずいぶん悩んでいました。まさか、情報が洩れるとは・・あれだけ、慎重にとお願いしたじゃないですか。これは警察の落ち度ですよね。」
結城は五十嵐に向かって強い口調で言った。五十嵐は、山崎を見た。
「妙ですね・・。」と山崎が切り返し、言葉をつづけた。
「あのSNSの情報は、あなたが流したことは、私たちの捜査で、すでに判っているんですよ。どういうことか説明してもらいましょう。」
「私が?そんなわけないでしょう。どうして私がそんなことを。」
結城は全く身に覚えのないことを言われて反論する。
「やっていないと?」と五十嵐が訊いた。
「やるはずないでしょう。私の使命は議員を守ることです。それは先代からも厳しく言われていましたから。仮に、議員が罪を犯したとしたら、代わりに罪をかぶる覚悟です。そんな私がどうして。」
結城は真剣な顔で答えた。
「署で詳しく話を伺います。ご同行願います。」

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