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1-8.玉林寺墓地 [峠◇第1部]

 寺に着いた幸一は、早速、住職の姿を探した。
 境内や本堂、庫裡、納屋、まで回ったが見あたらなかった。どこかの檀家周りでもしているに違いない。
 
 寺の裏手にある墓地に入ってみた。住職は、墓地をよく手入れしているらしい。雑草もなく、供えられた花もきれいに咲いている。
 墓地には、この村の殆どの家の墓があるらしく、寺の構えに比べてかなり広い。
 墓地は東西と南北に走る石畳で四方に分かれていて、それぞれの一番奥に当たるところにはひときわ大きな墓があった。まるで、この村を縮小したような造りだった。
 南の墓には「玉水家」、東の墓が「玉城家」、西の墓には「玉穂家」とあった。
 だが、北の墓だけは壇を残すのみで墓石はなかった。かなり以前に取り壊されたような感じだった。墓石はないが、周囲はきれいに手入れされている。よく見ると、壇の真ん中には、花が植えられている。住職が植えたものだろうか?それとも、この村の上の地区の住人が植えたものだろうか。きれいに咲いている。

 幸一はこの墓からも、さっきバスの回転場で見たそれぞれの屋敷が各集落の代々の顔役の様な存在であることがわかった。

 「上の地区の顔役はどうしたんだろう。にしきやで訊いた事故で溺死した青年が、上の衆の顔役だったのだろうか。それなら、跡継ぎを亡くしてしまったということになる。それでも、何故、墓を壊すような事になったんだろう。」
 しばらく考えていたが、なんだかこの村の集落毎の対立や伝説などと関係があるような気がして、やはり住職に尋ねることにした。

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