2-3.目的 [峠◇第1部]
「わかったよ。本当の事を話すよ。でも、君には関係のないつまらないことだよ。それに、今のところ、誰にも迷惑を掛けた訳じゃないんだし。」
「興味があるのよ、あなたに。なんだか、不思議な感じ。岬であった時にもそう思ったんだけど、何か普通の人が持っているべきものが一部分無いような。そう、幽霊みたいにふわふわした感じがするのよ。」
怜子はいたずらっこの様な眼をして言った。
「幽霊なんてひどいな。でも、君の目は当たってるよ。」
そう言ったところで、注文したランチが出てきた。
ケンは、ランチをテーブルに運びながら、
「珍しいな。怜子が男に興味を持つなんて。プライドの塊みたいに、昼間は、俺らとは口も聞かない女でさ。だいたい、こんな店に来るのも変なくらいなのに。」
ちょっとからかい気味にこう言った。
怜子はケンの話はわざと聞こえないような態度で、窓の外に視線をやった。
「そうそう、そう言う態度がいつもの怜子だよな。」
幼なじみがいる店で気楽に入れるから、福谷を連れていったのかと思ったが、そうでも無かったらしい。
ケンがカウンターの向こうに消えると怜子は視線を戻して
「じゃあ、本当の目的を教えてよ。」
また、さっきのいたずらっ子の眼で、半ば身を乗り出すように言った。
「実は、この村に来たのは、本当の自分を見つける為。いや、因縁みたいなものを解くためなんだ。」
「本当の自分?因縁?」
「僕は名古屋で育ったんだ。父は小さいときに亡くなって母が僕を育てた。その母も5年前に肝臓を煩って他界したんだ。」
「それとこの村にどういう関係があるの?」
「いや、まだわからないんだが、母は、なにかの事故で記憶を無くしていて、自分の名前以外の事をまったく覚えていなかったらしい。そんな母を助けたのが父で、名古屋で小さな酒場をやっていたんで、母もその恩に報いるために、一生懸命働いたらしいんだが、体をこわしてしまったんだ。」
「そう。 でもそういうあなたのお母様の境遇とあの村が何の関係があるの。」
「母は亡くなる直前に、記憶を少し取り戻したらしく、こんな事を言ったんだ。『玉は、村の守り神。そこがあなたのふるさと』。それまで、自分の境遇など、特にこだわっていなかったんだが、その言葉を聞いてから、母の過去・自分とは何者なんだとか考えるようになってね。」
「それで、玉の名の付く神社を回って、自分探しをしている訳ね。」
そこまで聞くと彼女は、
「ねえ、私にも手伝わせて。」
「でも、そんな・・・」
「あの村の人は、よそ者には冷たいの。そんなにいろんな事を話してはくれないし、だいたい、何の宛も無いんでしょ。それなら、私が案内役になってあげるわ。私のことを知らない人はいないから。」
「でも、お父さんのことは。昨日の印象でもきっと快くは思われていないし。」
「大丈夫よ。昨日はちょっと虫の居所が悪かっただけだから。それに、本の取材の手伝いで、あの会社のことも大きく乗せてくれる約束だとか言っておくから。」
「そんなわけにいくかなあ。それに、大体、君が手伝う理由は無いよ。」
「さっき言ったでしょ。私はあなたに興味があるの。あなたの自分探しを手伝うと言うことは、私の興味と一致しているの。」
強引でやや理屈の通らない話しだが、幸一にはそれ以上に反対する意味が無かった。むしろ、こんな娘が興味を持ってくれたことがやけに嬉しく思えた。
「興味があるのよ、あなたに。なんだか、不思議な感じ。岬であった時にもそう思ったんだけど、何か普通の人が持っているべきものが一部分無いような。そう、幽霊みたいにふわふわした感じがするのよ。」
怜子はいたずらっこの様な眼をして言った。
「幽霊なんてひどいな。でも、君の目は当たってるよ。」
そう言ったところで、注文したランチが出てきた。
ケンは、ランチをテーブルに運びながら、
「珍しいな。怜子が男に興味を持つなんて。プライドの塊みたいに、昼間は、俺らとは口も聞かない女でさ。だいたい、こんな店に来るのも変なくらいなのに。」
ちょっとからかい気味にこう言った。
怜子はケンの話はわざと聞こえないような態度で、窓の外に視線をやった。
「そうそう、そう言う態度がいつもの怜子だよな。」
幼なじみがいる店で気楽に入れるから、福谷を連れていったのかと思ったが、そうでも無かったらしい。
ケンがカウンターの向こうに消えると怜子は視線を戻して
「じゃあ、本当の目的を教えてよ。」
また、さっきのいたずらっ子の眼で、半ば身を乗り出すように言った。
「実は、この村に来たのは、本当の自分を見つける為。いや、因縁みたいなものを解くためなんだ。」
「本当の自分?因縁?」
「僕は名古屋で育ったんだ。父は小さいときに亡くなって母が僕を育てた。その母も5年前に肝臓を煩って他界したんだ。」
「それとこの村にどういう関係があるの?」
「いや、まだわからないんだが、母は、なにかの事故で記憶を無くしていて、自分の名前以外の事をまったく覚えていなかったらしい。そんな母を助けたのが父で、名古屋で小さな酒場をやっていたんで、母もその恩に報いるために、一生懸命働いたらしいんだが、体をこわしてしまったんだ。」
「そう。 でもそういうあなたのお母様の境遇とあの村が何の関係があるの。」
「母は亡くなる直前に、記憶を少し取り戻したらしく、こんな事を言ったんだ。『玉は、村の守り神。そこがあなたのふるさと』。それまで、自分の境遇など、特にこだわっていなかったんだが、その言葉を聞いてから、母の過去・自分とは何者なんだとか考えるようになってね。」
「それで、玉の名の付く神社を回って、自分探しをしている訳ね。」
そこまで聞くと彼女は、
「ねえ、私にも手伝わせて。」
「でも、そんな・・・」
「あの村の人は、よそ者には冷たいの。そんなにいろんな事を話してはくれないし、だいたい、何の宛も無いんでしょ。それなら、私が案内役になってあげるわ。私のことを知らない人はいないから。」
「でも、お父さんのことは。昨日の印象でもきっと快くは思われていないし。」
「大丈夫よ。昨日はちょっと虫の居所が悪かっただけだから。それに、本の取材の手伝いで、あの会社のことも大きく乗せてくれる約束だとか言っておくから。」
「そんなわけにいくかなあ。それに、大体、君が手伝う理由は無いよ。」
「さっき言ったでしょ。私はあなたに興味があるの。あなたの自分探しを手伝うと言うことは、私の興味と一致しているの。」
強引でやや理屈の通らない話しだが、幸一にはそれ以上に反対する意味が無かった。むしろ、こんな娘が興味を持ってくれたことがやけに嬉しく思えた。
2009-09-14 16:39
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