3-1.昭の事故 [峠◇第1部]
翌朝、幸一はパトカーのサイレンで目が覚めた。
この静かな村に、それもこんな早朝何が起きたのか、幸一は、寝床から這い出して、すぐにサイレンの後を追った。
どうやら四方橋のあたりらしかった。
駐在は真っ青な顔をして、現場にいた。祐介やケン、怜子の顔もあった。
川底には、赤い車が1台、半分埋まるように沈んでいた。紛れもなく、昭の愛車だった。レッカー車が到着して、川から車を引き上げようとしたとき、ドアが開き、中に昭の姿が見えた。誰ともなく叫び声を上げた。
検証の結果、「飲酒運転による運転操作ミスが原因で、橋の付け根に接触しその反動で川へ落下、そのまま溺死」したという事だった。
前夜、最後に一緒にいた幸一も一部始終を訊かれた。だが、特に怪しいこともなく、昼近くに開放された。
昼食をと、にしきやに寄ってみた。
入り口を入るなり、女店主が
「あんた、だいじょうぶかい?」
と声をかけ、手招きをした。
不審に思いながら近づくと、彼女は周りを気にしながら小声で、
「昭のお母さんには気をつけな。それと、早めにここから出て行ったほうがいいよ」
と、脅しめいた口調で告げた。
そういえば、ここに来る間、誰かに見られているような気配は感じていたし、行き違う人も様子がおかしかった。
昼食を買って店を出たところで、急に声をかけられた。
「待ちなさい!この人殺し!」
そこには、上品な婦人が立っていた。
しかし、その眉間には深いしわがあり、はっきりと敵意を持って幸一を睨み付けていた。
幸一にはすぐに、その婦人が昭の母親だとわかった。
独り息子を亡くしたショックは相当なものらしく、飲酒による事故だと言われても、納得できるわけでもない。最後に一緒に居た幸一を恨むのも筋違いではあるが、恨み・悲しみをどこかにぶつけるしかやりようのないくらいショックなのだった。
幸一は、なんと答えてよいかもわからず、立ちすくんでいた。
「昭を殺したのはあなたでしょ。昭を返して!少しくらいのお酒で事故を起こすような子じゃないわ。あなたのせい。昭を帰して!」 そう叫ぶ婦人の声は、静かな村の中に響きわたった。
「いいかげんにしろ!」
そう怒鳴る声がした。振り向くと、水産会社の剛一郎が立っていた。
「前々から、酒を飲んだら運転はするなといっとったのに。本当に馬鹿息子じゃ。五月さんも言いがかりは止しなさい。」
昭の母親、玉穂五月はそれでも収まらないような形相で、幸一を睨み付けている。
剛一郎は、幸一に向かって、
「よそ者がうろうろするからこんなおかしなことが起こるんじゃ。早くこの村から出て行ってくれ!」
そう言われて、幸一は、にしきやを出ていかざるを得なかった。
この静かな村に、それもこんな早朝何が起きたのか、幸一は、寝床から這い出して、すぐにサイレンの後を追った。
どうやら四方橋のあたりらしかった。
駐在は真っ青な顔をして、現場にいた。祐介やケン、怜子の顔もあった。
川底には、赤い車が1台、半分埋まるように沈んでいた。紛れもなく、昭の愛車だった。レッカー車が到着して、川から車を引き上げようとしたとき、ドアが開き、中に昭の姿が見えた。誰ともなく叫び声を上げた。
検証の結果、「飲酒運転による運転操作ミスが原因で、橋の付け根に接触しその反動で川へ落下、そのまま溺死」したという事だった。
前夜、最後に一緒にいた幸一も一部始終を訊かれた。だが、特に怪しいこともなく、昼近くに開放された。
昼食をと、にしきやに寄ってみた。
入り口を入るなり、女店主が
「あんた、だいじょうぶかい?」
と声をかけ、手招きをした。
不審に思いながら近づくと、彼女は周りを気にしながら小声で、
「昭のお母さんには気をつけな。それと、早めにここから出て行ったほうがいいよ」
と、脅しめいた口調で告げた。
そういえば、ここに来る間、誰かに見られているような気配は感じていたし、行き違う人も様子がおかしかった。
昼食を買って店を出たところで、急に声をかけられた。
「待ちなさい!この人殺し!」
そこには、上品な婦人が立っていた。
しかし、その眉間には深いしわがあり、はっきりと敵意を持って幸一を睨み付けていた。
幸一にはすぐに、その婦人が昭の母親だとわかった。
独り息子を亡くしたショックは相当なものらしく、飲酒による事故だと言われても、納得できるわけでもない。最後に一緒に居た幸一を恨むのも筋違いではあるが、恨み・悲しみをどこかにぶつけるしかやりようのないくらいショックなのだった。
幸一は、なんと答えてよいかもわからず、立ちすくんでいた。
「昭を殺したのはあなたでしょ。昭を返して!少しくらいのお酒で事故を起こすような子じゃないわ。あなたのせい。昭を帰して!」 そう叫ぶ婦人の声は、静かな村の中に響きわたった。
「いいかげんにしろ!」
そう怒鳴る声がした。振り向くと、水産会社の剛一郎が立っていた。
「前々から、酒を飲んだら運転はするなといっとったのに。本当に馬鹿息子じゃ。五月さんも言いがかりは止しなさい。」
昭の母親、玉穂五月はそれでも収まらないような形相で、幸一を睨み付けている。
剛一郎は、幸一に向かって、
「よそ者がうろうろするからこんなおかしなことが起こるんじゃ。早くこの村から出て行ってくれ!」
そう言われて、幸一は、にしきやを出ていかざるを得なかった。
2009-09-14 18:09
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