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file2-6 裏口 [同調(シンクロ)]

F2-6 裏口
「あ、女の子が目を覚ましたみたい。」
レイが突然口を開いた。
「シンクロ出来そう?」
亜美が心配げな顔で問いかける。レイは、より神経を集中するように、両手で頭を覆い、少し猫背になる、いつもの姿勢になった。黒髪が少し青みがかって光っているように、亜美には見えた。紀籐はじっと外の様子を探っていた。

「今、隠れていたクローゼットから顔を出してる。・・女の子の部屋みたい。ランドセルが転がってる。・・窓のほうに・・今、窓のロックを開けたわ。・・多分、逃げようと思ってる・・ダメ・・また、階段を上る足音で・・クローゼットに隠れたわ。」

一樹が一旦車に戻ってきた。
「無理だな。裏口からは入れそうだが、庭に回るのはちょっと難しい。他に方法はないかな。」
「一樹、今、レイちゃんがシンクロして・・女の子の様子がわかったわ。・・2階の窓、開けたみたい。」
「じゃあ、ベランダに出てるのか?」
「いいえ、またクローゼットに隠れたみたい。」
「そうか・・2階の窓はロックされていないんだな!」
一樹は、さっきの思いつきを今一度試そうと考えた。
「俺が、何とか、2階のベランダに入り込む。その間、亜美が犯人を1階に引き付けてくれ。」

そういうと一樹はまた裏口に回った。裏口には小さな門扉があったが、鍵は掛かっていなかった。
強盗犯に気付かれないよう、そっと中に入り込むと、すぐにガレージに取り付いた。都合よく、ガレージの脇には、自転車があり、それを足場にして、ガレージの屋根に上がった。おそらく犯人はいま物色中であり、外の様子など注意を向けてはいないと確信して、ガレージの屋根伝いに、屋根まで登っていった。
ゆっくりと気付かれないように、ようやく2階のベランダ近くまでたどり着いていた。

その様子を見て、亜美と紀籐は、裏口に回った。
紀籐はスタンガンを取り出し、亜美に渡した。
「拳銃を使うわけにはいかないから、これでも役に立つだろう。」

裏口には、インターホンはなく、古いタイプのチャイムがついているだけだった。
玄関からだとカメラ付インターホンで、犯人にも外の様子が見えてしまう。だから、裏口へ回るように行ったのだろうと考えた。

亜美はチャイムを3回も押した。家中に響くほどの音量でチャイムが鳴り響き、3度も押したせいで、しばらく室内に響いていた。

鳴り響くチャイムに一番驚いたのは強盗犯のようだった。あわてて、加藤由紀を羽交い絞めにし、キッチンに隠れた。そして、どう対処しようか考えているようだった。

「顔を・・出さないと・・かえって・・不審に・・思われるんじゃ。」
やっとの思いで吐き出した由紀の言葉に、
「よし。だが、おかしなマネはするなよ。適当に言って追い返すんだ!いいな!」
そういうと腕を緩めた。そして、ゆっくりと、強盗犯は由紀を連れて裏口へ向かった。

2階では、先ほどのチャイムを合図に、一樹がベランダから窓を開けて部屋の中に入っていた。
真っ暗な部屋の中。外から差し込む街明かりで何とか様子がわかる程度だった。子供部屋には、広すぎるほどだが、強盗犯が物色したのか、机の上もベッド周りもいろんなものが散乱している。
一樹は、クローゼットを見つけると、ゆっくりと開けた。中には小学生の女の子が震えながら座っていた。

一樹はささやくように少女に言った。
「声を出さないように!もう大丈夫だ。僕は、矢沢一樹。警察官だ。君を助けに来た。」
少女はこくりとうなずき、一樹に抱きついた。少女は恐怖でかガタガタと震え、一樹の体を締め付けるほどの力で抱きついていた。
「もう大丈夫だ。怪我ないかい?」
また少女はこくりとうなずいた。

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