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file3-2 署長室にて [同調(シンクロ)]

F3-2 ふたたび署長室にて
強盗事件の翌日、事件の検証や取調べで、橋川署はバタバタとしていた。署長や亜美・一樹も、事件の状況説明や検証への立会い等で動き回っていた。被害者からも聞き取りをする予定だったが、体調が優れないと言い、自分の病院に入ったまま面会できなかった為、後日となった。
夕刻には、何とか一通りの裏づけ捜査は終了し、一樹や亜美は解放された。

いつもの資料室で一樹は古びたソファーに横になっていた。そして、ぼんやりと、レイの能力を思い返していた。
「これでいいのかなあ。」
ぼそっと呟いて、天井を見上げた。夕日が窓から差し込んで、部屋の中がオレンジ色になってきた時、内線電話が鳴った。署長からの呼び出しだった。

署長室に入ると、署長と刑事課の鳥山課長、そして亜美が、立派なソファーに腰掛けて一樹を待っていた。
「よし、来たな。まあ、座りなさい。」
どういう状況か読めないまま一樹は亜美の隣に座った。
紀籐は、二人の顔をしげしげと見ながらこう言った。
「本日付で、矢沢一樹と紀籐亜美を刑事課配属とする。」
突然の辞令で二人とも顔を見合わせた。
「ちょっと、パパ!・・いえ、署長。どういうことなのか御説明下さい。」
「いや、そのまんまなんだがな・・・・二人のこれまでの活躍を評価して、刑事課で頑張ってもらおうと、鳥山君とも相談して決めた事なんだが・・」
紀籐署長は、にやにやしながら、まだ何か含んでいるものがあるような答え方をした。

「ですが、署長!・・これまでの活躍って言われても・・あれは・・レイさん・・いや・・偶然の・・」
一樹がこう言ったところで、刑事課長の鳥山が口を開いた。
「一連の事件の経緯は署長から全てお聞きした。私もまだ半信半疑なんだが、まあ、実績にはなっているわけだし・・もともと、君は刑事課に戻してもらいたいと私からお願いしていたんだから。」
「ですが・・じゃあ、・・いや・・亜美さんはどうなんですか?庶務課で捜査のイロハさえ知らないし、第一危険な仕事です。署長のお嬢さんでもあるわけですし・・」
そう聞いて、紀籐署長が応えた。
「判った。全て説明する。・・二人は刑事課配属だが、刑事課とは別に動いてもらう。そう・・レイさんのチカラを活かせる、いや、レイさんを守る為に、二人で特秘チームとして働いてもらいたい。レイさんが捉えた事件を被害が出る前に処理するんだ。」
「そうなると・・」
一樹が聞きたいことは判っていた。

「そう、表向きは今と変わらない。ただ、亜美は資料室に移ってもらう。いつ、レイさんから連絡が入るかわからないからな。それと、資料室には新しいパソコンを入れる。市内と言わずより多くの情報が掴める様に、私のIDで情報が取れるようにしておく。・・まあ、他に必要なものがあれば言ってくれ。」
「わかりました。今よりももっとレイさんを守れるし、犯罪も防げるようになるのなら・・ありがとう、パパ・・イエ、署長。」
亜美は署長の説明にいたって乗り気になっていた。
一樹はレイの憔悴した状況を知っているだけに、すんなりとは受け入れられない。

「良いんでしょうか?・・レイさんを本格的に事件に巻き込むことになるようで・・負担も大きいんじゃ。」
「うむ。それは私も気掛かりだが・・一度、御両親にも御挨拶と了解をいただかないといけないな。」
「じゃあ、これから、私たちで先にレイさんに会いに行きましょう。いきなり、署長が訪問するのもね。」
亜美はそういうと立ち上がり、一樹の腕を掴んで出て行った。一樹は不承知の様子ながらも亜美にしたがうことにした。

「おい!亜美!待てってば。・・会いにいくって、レイさんの自宅、知ってるのか?」
亜美は、鞄から車のキーを取り出しながら、
「ええ、わかってるわ。彼女、神林レイって言ったでしょ。だから、神林病院に行けば会えるでしょ。さあ、車、運転してちょうだい。」
そう言って一樹に車のキーを投げた。


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