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file3-3 密談 [同調(シンクロ)]

F3-3 密談
二人が出て行った署長室で、
「あとは、鳥山君にバックアップを頼む。あの二人は暴走しかねない。一樹が言ったように、亜美にもレイさんにも決して危害が及ぶような事があっては困る。・・なかなか、刑事課のメンバーの理解を得るのは難しいとは思うが、いざとなったら署を挙げてバックアップする事も必要だろう。」
「はい。了解しました。」
「それと、レイさんの能力については、絶対秘密にしておかねばならない。」
「ええ、心得ています。」

「それと、あの行方不明事件の捜査はどうなっている?」
「ええ、引き続き情報収集を進めています。まだ遺体とか被害者も見つかっていない状況ですので、捜査本部を立てる事もできず、内々に動いているんですが・・ああ、県警の五十嵐本部長からも、協力支援の返答もいただいています。」
「そうか。県警も動いてると言う事か。」
「どうも、似たような若い女性の不明事件が他でも発生しているようで、それぞれが関連していると言う見方で捜査を進めているようです。」
「そうか・・それなら、綿密に連絡を取って、一国も早く解決したいものだ。被害者を一人でも減らせるよう警戒も強化すべきだな・・」
「ただ・・今のところは具体的な捜査対象は浮かんでいないので、とりあえず、被害者の周辺情報の聞き込みを進めていきます。・・署長がおっしゃったところも一応調べていますが、なかなか有力な情報は浮かんできていません。・・・私一人ではなかなか、できれば矢澤を現場に復帰させたかったのですが・・」
「ああ、君の希望は知っている。・・そのこともあって、今回の配属をしたんだよ。」
「と、おっしゃると?」
「ああ、話したように、レイさんの能力が、ひょっとしたら行方不明・・いや拉致される女性をキャッチできないと思ってな。そこから糸口が見えれば一気に進むんじゃないかと期待しているんだ。」
「なるほど・・わかりました。私も、矢澤とできるだけ情報交換しておくようにします。」
「ああ・そうしてくれ。」

紀籐署長は、署の窓から通りを眺め、行きかう人をじっと見ていた。

「あ、それから、一つ報告があります。先日の魁トレーディング会長孫娘誘拐事件の件ですが。」
「何か進展が?」
「捕まえた二人のうち、主犯格はやはり、元娘婿の加藤祐一のようで、ほとんど計画や連絡等は行なっていたようです。随分、やり手の営業マンで、会長にも認められて、出世して娘とも結婚して・・見た目にはエリートコースにいたようですが、娘と結婚してすぐに離婚しているんです。どうも、家族内のごたごたらしいんですが・・そのへんはまだこれから裏付けしていきます。ただ、もう一人は、監禁場所の提供の範囲だったようで、あまり詳細な中身を知らない様子ですね。」
「そうか・・やはり、身内の恨みによる犯行ということか。・・まあ、通常通りの裏づけをすすめてくれ。」
「あ、報告しておきたいのはそのことではなく、逮捕した誘拐犯の一人、武田フーズの社長のことなんです。実は、一人娘が2年ほど前に行方不明になっているようで、捜索願も出されていました。」
「何だって?」
「ええ、私もびっくりしたんですが、ただ、何の手がかりはなくて、進展していません。」
「だが、誘拐事件とその件はつながらないな。」
「ええ、武田フーズはその後も、商売は順調のようで、半年前に、魁トレーディングから一方的に取引契約の解除をされたのが倒産のきっかけになったようです。ですから、それが今回の誘拐事件につながったようなんですが。」
「ふむ・・・」
「ただ、今捜査を進めている件を考えると、行方不明というのがどうにも引っかかって・・勘みたいなものですが・・どこかで、つながっているような気がしてるんです。」
「・・・魁トレーディングか・・やはりしっかり調べたほうがよさそうだな。」
「ええ。」
「何かあったらまた報告してくれ。」
鳥山は頭を下げて署長室から出て行った。

紀籐署長は、机に座ると、決裁箱の中を覗き込んで何か探していた。
「そうだ、先日、こんなものが来ていた。行く気はなかったが、この際、どんな人物か見てくるか。」
手にしていたのは、魁トレーディング新社屋完成披露パーティの案内状だった。
「少し前に、誘拐事件にあったというのに、・・まあ、いい機会だからな。」


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