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file4-4 KTC工場 [同調(シンクロ)]

F4-4 工場「KTC」
「全く、失礼しちゃうわ!」
亜美は、相当お冠だった。あれほど痛烈に指摘されるとは思っていなかったし、自分では普通よりも少し美人の部類に入るのではと自負していた部分があったので、なんだかプライドをずたずたにされたような感覚だった。指摘された事は実は常々気になっていたところで、加藤医師のプロの力にはある程度感服していた。
「さあ、次だ。」
一樹は亜美の怒りは判っていながらも、そこを触れると一層大変な事になるのがわかっていたので、あえて無機質にそう言って、車を出した。

しばらく走ったところで、亜美が、
「次はどこ?今度はどんな楽しい事が待ってるの?」
少し嫌味をこめて尋ねた。
「情報の出所の工場に行ってみよう。まあ、勧誘した男がいるわけじゃないが、何かヒントはあるかもしれない。」
程なく、目指す工場に着いた。
工場は市の東部の丘陵地帯にあり、いくつか大きな金属加工の工場や自動車の部品工場等がある地域だった。目的の工場の前には、大型トレーラーが製品の搬出をする為に必要な広い直線道路とそれに続くロータリーがあった。正門には、警備員の詰め所があり、従業員は脇にある小さな通路を通るようだった。
一樹は、通路が見えるように、その道路の端の方に車を停めた。

「あれ?ここ、前は・・なんとか工業っていうところだったわよね。いつ名前が変わったのかしら。」
「ああ、確か、小島工業っていう工場だったが、2年位前に買収されて、今はKTCっていう会社名になっているみたいだ。ただ、やってる事はそのままらしいんだが・・」
一樹が事前に調べておいたのか、手帳を取り出して話した。

「え?KTC・・それってどういう会社なの?」
「ほら・・魁トレーディングって、例の誘拐事件があったろう。あの権田健一が会長の魁トレーディングが買収したんだ。」
「しらなかったわ・・。先日、パパと一緒にいったパーティ会場でみた黒いベンツは、やっぱり魁トレーディングの車だったのね。」
「なんだい、署長って魁トレーディングを調べてるのか?」
「ううん?どうかな。とりあえずパーティには行ったけど・・特に調べてるってことじゃないみたい。ただ、胡散臭い会社だとは思ってるみたいだけど・・」
「ふーん」

一通りの情報交換の後、一樹と亜美は正門の様子を見ていた。
「まさか、勧誘した男が現れるわけはないな。・・他を当たってみるか・・」
そう呟いた時、正門の前に一人の女性が現れた。辺りをキョロキョロ見回している。誰かを探している様でもあった。正門の警備室に行き、何か問い合わせているようだが、応じてもらえず、苛立ってでてきた。相当にうろたえた様子にも見えた。

「あ?・・あれは・・」
一樹はそういうと、いきなり、車のドアを開けて走って出て行った。亜美はその様子をじっと見ていた。

「おい!ソフィア!こんなところで何してるんだよ?」
その声に、女性が振り返った。
「あ、一樹!ねえ、助けて!」
そういうと、一樹の腕にすがりついた。そして、一樹の胸に顔を埋めて泣き始めた。

亜美は、車の助手席からその様子を見ていた。会話は聞こえない。ただ、女性が一樹に取りすがって、泣いている様にも見えた。ただならぬ様子・・いやただならぬ仲に見え、少し嫉妬心が沸いていた。

「一体どうしたんだ。」
「あの子・・店に・・いた・・あの子が・・・いなくなっちゃったの。」
「ちょっと、落ち着け。話を聞かせてくれ。」
一樹はそう言って、ソフィアを車につれてきた。そして、亜美を後部座席に移らせ、助手席にソフィアを座らせた。

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