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12.収穫 [AC30第1部グランドジオ]

海が近づくと、4人は小高い丘に登った。そこからは、長く伸びる海岸線が見通せる。少し、山手の方に視線を遣ると、萱野原の向こうにこんもりとした森が見えた。
「あれ、フィリクスの森じゃないか?」
アランが指差す。ハンクがどこだ何処だという風に、アランの指さす方を見る。
「どうかな?」
プリムは少し否定的な返答をする。
「いや、そうに違いないさ。さあ、行こう。」
ハンクはもう躍起になっている。
「ちょっと待つんだ。・・」
キラがそう言って、萱野原から森のあたりをじっと見つめる。さらに、その先の山へも視線を遣る。ウルシンが潜んでいないか探っているのだった。キラは目を閉じ、今度は、風と音を読む。皆もしばらくじっとキラの反応を待つ。
「良いだろう。ウルシンたちは居ないようだ。だが、注意して行こう。どんな虫が潜んでいるか判らない。」
再び、キラが先頭になって歩き始める。
萱野原を抜けたところで、枯れ果てたコケ類の荒地に入る。夏の前、長雨の季節にはおそらくここらは湿地だったに違いない。灼熱の夏季ですっかり干上がったようだった。その先に、小山かと思うほどのフィリクスの森ができていた。その数は予想を超えていた。それと、樹上には大きな実がたわわに付いている。一つ一つの実も、前に見たのよりも一回りも二回りも大きく、一つが人の頭ほどの大きさだった。
さすがのハンクも、目の前の光景に声が出なかった。
だが、残念なことに、いずれの樹も遥か高く伸びていて、実をもぎ取るには、登らなくてはならなかった。高さは優に10mを超えている。切り倒せるようなものではない。
「どうやって取る?」
ハンクは少し怖気づいたように訊く。
「登っていって切り落とすしかないだろうな。」
アランはそう言うと、背中のリュックを下ろし、グラディウスだけを背中に付けて、フィリクスの樹に取り付いた。フィリクスの樹の表皮には、棘がある。注意深く登る事を余儀なくされた。右手、左手、右足、左足と交互に注意深く登っていく。それを見ていた、キラも同様に登っていく。ハンクとプリムは自信がなかった。実のあるところに辿り着くまでどれほどの棘が体を貫くかと考えると、動けなかった。
「二人は下で実を受けてくれ!」
そう言うと、二人は徐々に登っていく。最初に実のあるところに着いたのは、キラだった。
「さあ、落とすぞ!」
フィリクスの実は硬い表皮で覆われている。根元をグラディウスで切り落とす。下で、ハンクとプリムがネットを広げて受け止める。ドスンという鈍い音がすれば、周囲から虫たちが集まってくるのだ。できるだけ音をさせないように慎重に作業を進める。
アランも実を切り落とし始めた。
「一人5つくらいかな?」
アランが訊く。
「ああ、これだけ大きいと持ち帰るのも大変だ。それに、ウルシンたちが気付いて現れるかもしれない。また、明日も取りに来ればいいさ。」
キラが樹の上で答える。
持ち帰れるだけの実を切り落としたところで、ふと、アランが言った。
「なあ・・キラ、あれ、何だろう?」
アランは遠く浜辺の方を指さしている。キラがその方角を見ると、波打ち際に何か白い丸いものが見えた。少し距離があるのと、打ち寄せる波で揺れていて、その形がはっきりとは捉えられなかった。
「とにかく、降りよう。樹の上であまり声を立てるとウルシンに見つかるかもしれない。」
「ああ。」
二人はゆっくりとフィリクスの樹から降りてきた。
下では、ハンクとプリムが、フィリクスの実をネットに詰め込んで荷造りをしていた。
「よし、帰ろう。みんな、喜ぶぞ!」
ハンクはひときわ大きなネットを背負って嬉しそうだった

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