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⒔白い卵 [AC30第1部グランドジオ]

「その前にちょっと・・・。」
アランが先ほど見た白いものの正体を突き止めようと提案する。ハンクは、しぶしぶ承知した。いったん、砂浜へ出ると、フィリクスの実を置き、白いものが見えた海岸の岩礁に向かった。
「このあたりだと思ったんだが・・・。」
アランが岩に上り周囲を探る。
「もっと先だったかな?」
ひょいと岩を一つ乗り越えた時だった。目の前に白いものがあった。すぐにみんなを呼んだ。
その白いものは、卵のような形状をしていて、人間よりも大きかった。岩の間に挟まれる格好で、時々、波に揺れた。
「いったい、何だろう?」
ハンクが少し距離を置いた場所から恐るおそる言った。
「何かの卵かな」
プリムもハンク同様、少し離れた場所で言う。
「馬鹿な・・・こんな大きさの卵なんて・・これが卵なら、こいつを産んだ親はどれほどの大きさだと思う?そんな大きな奴、見たことないぞ。」
アランが少し怒った調子で言う。確かにアランの言う通りだった。これが卵であれば、親はゆうに10mを超える巨体と言える。いや、それ以上かも知れなかった。
「じゃあ・・これは、何だ?・・誰かが作ったって言うのか?それとも。フィリクスみたいな植物の実か?」
プリムが言う。
キラはじっと見つめたまま、何も言わなかった。
「なあ、キラ、お前、何だと思う?」
アランが訊いた。
キラは目を閉じ、何か深く考えているようだった。そして、そっと手を伸ばして、その白いものに触れた。
「おい・・大丈夫か?」
プリムが驚いて言った。キラは『大丈夫』というように、こくりと頷いて見せた。
キラはぐるりと周囲を巡りながら、掌で白いものを撫でている。何かを探しているようにも見えた。
皆が固唾を飲んで見守っている。
しばらく沈黙が続いてから、キラがようやく口を開いた。
「なあ、みんな、一旦、こいつの事は俺たちだけの秘密にしないか?」
「秘密?」
ハンクが言う。
「ああ・・・秘密だ。正体が判るまでは誰にも知られない方が良い。・・。」
「やっぱり卵なのかい?」
キラの言葉にハンクは一層恐怖を感じたようだった。
「いや・・・そうじゃない。・・そんなものじゃない。」
「じゃあ、一体、何なんだ?キラ、お前、こいつの正体を知っているのか?」
アランが少し強く言った。キラは、その質問には答えなかった。
「とにかく、秘密だ。そして、ジオフロントに戻ったら、すぐに俺のセルに来てくれ。大事な話があるんだ。」
キラはそう言うと、さっさとその場から立ち去り、浜辺に置いたフィリクスの実が包まれたネットを背負った。皆も仕方なく、その場を去り、キラのあとを追うようにジオフロントへの帰路についた。
キラは、ずっと口を閉ざしたままだった。その雰囲気に、ハンクもプリムもアランもずっと沈黙を守って歩いた。ジオフロントに着くと、フィリクスの実を置いた。一族の者たちが驚いた表情で4人を迎える。
「おや・・こんな大きなフィリクスの実、どこから持ってきたんだ?」
キラの父、アルスが訊いた。
「浜まで行ってきたんです。見込み通り、大きな樹がありました。明日も行きます。」
キラはそっけなくそう答えると、すぐに自分のセルへ戻って行った。
ハンクやプリム、アランも一旦自分のセルへ戻り、猟に出るためのライブスーツから、普段の服へ着替えを済ませてから、キラのセルへ向かった。

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