SSブログ

14.秘密の告白 [AC30第1部グランドジオ]

セルにみんなが集まるのは珍しい事だった。
ここでは、日中はほとんど一族全員がライフエリアの中央にある、コムブロックで過ごすことになっている。暮らしを維持するための仕事もたくさんあって、皆がそれぞれに分担しているためだった。地表に狩猟に出かける男たちも、灼熱と極寒の季節には、コムブロックで仕事をする。それぞれにセルに集まる事など滅多にないのだった。
キラのセルに、ハンクやプリムが来るのは初めてだった。アランは、以前に一度、猟の相談で訪れたことがあった。
セルのドアが静かに開く。
「さあ、入れよ。」
キラが招き入れる。アランはすぐに中に入ると、隅に腰を下ろした。ハンクとプリムは暫くセルの中を見回したあとで、アランの隣に腰を下ろした。セルの中の一番大きなスペースには、ウオーターベッドとデスク、ソファが置かれている。
小さなキッチンとシャワー室、クローゼットが奥につながった構造であった。これと言った娯楽があるわけではない。唯一、デスクにあるビジョンを通して、知識を得るのである。それも、ここでの暮らしに関わる範囲であった。
「大事な話って何だよ。あの、卵みたいのと関係があるんだろ?」
アランが口を開いた。
「ああ・・」
キラは躊躇いがちにそう言うと、一旦奥のクローゼットに入っていき、何かを抱えて出てきた。
「これを見てくれ。」
3人の前に、見たこともないものが幾つか並べられた。
一つは、皆が持っているグラディウス(剣)とよく似た形状で掌程度の大きさだった。一つは、同じような色の筒状のもので、長さが50cm程度だった。それともう一つは、薄い板状のものだった。掌に乗る程度のもので、ほぼ透明だった。
「なんだ、これ?グラディウスみたいだけど・・」
ハンクが、小さなグラディウスのようなものを取り上げた。それを見てプリムももう一つの筒状のものを触った。
「お前、これ、どこから持ってきた?」
アランが少し慌てた表情を浮かべて訊いた。
「禁断のエリアからだ。」
キラが言うと、ハンクとプリムは手にしていたものを放り投げた。禁断のエリアとは、ライフエリアの隣に広がるエリアだった。そこは、遥か昔に死に至る病が蔓延し多くの人が死に絶えたために、厚い壁で閉ざされたと言い伝えられている。誰もが、幼い頃には、興味本位で、隔壁のある場所まで行ったことはあるが、その向こう側へ行ってみようなどとは思わないものだった。一族に災いが及ぶことを誰もが恐れていたためだった。
「行ったのか?」
アランは意外に落ち着いて訊いた。
「ああ・・もう2年くらい前だ。」
「そうか・・。」
キラの答えにアランはうすうす感づいていた様な反応を見せた。ハンクとプリムは、極まった表情をしている。
「親父が怪我をして、代わりに猟に行くようになった頃だった。相談したいことがあって導師様のセルに行ったんだ。だが、導師様の姿はなかった。仕方なく帰ろうとした時、導師様のセルの少し上・・そう階段の行き止まりのところに、小さなドアがあるのが見えた。」
「それで?」
アランが続けるように訊く。
「少し開いているみたいだった。中に導師様がいらっしゃるのかと入ったんだ。中は、随分奥まで続く通路だった。そのまま、入ってみた。10分くらいかな・・その先にもう一つドアがあった。そこを開けると、そこは・・ほのかな明かりがあった。・・・暫くして、目が慣れてくると、そこは随分と広い場所だった。」
「禁断のエリアか・・・。」
アランが言う。
「そうだ・・禁断のエリアだった。」
繰り返される『禁断のエリア』という言葉に、ハンクとプリムは身を固める。それほど、『禁断のエリア』はジオフロントの人々には怖ろしい場所だと教え込まれてきたのだった。

nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0