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15.禁断のエリアからの土産 [AC30第1部グランドジオ]

「そこは、本当に先がどこまであるのか、わからないほど・・広い空間だった。」
キラは、その時の光景を思い出して、何かワクワクするような表情を浮かべていた。キラの表情とは全く逆の表情をハンクとプリムは浮かべている。
「で?・・・そこはどうだったんだ?」
アランは訊いた。キラは、アランが妙に落ち着いた様子でいるのに少し違和感を感じていた。
「足元に、ぼんやりと白い板のようなものがあった。・・あったというより、目につくように置かれていると言った感じだったんだ。・・・それが、こいつさ。」
キラは先程皆の前に出したものの中から、薄い板状のものを取り上げ乍ら言った。
「なんだ、それ?」
ハンクが少し落ち着いてきたのか、ようやく口を開いた。
「こいつは、ユービックって言うらしい。こうやって使うんだ。」
キラはそう言うと、板状のものに掌を充てる。すると、それは青白い光を放ち、「起動シマス」と機械的な声を発した。
「・・・はあ・・ビジョンみたいなものか?」
ビジョンとは、ライフエリアやそれぞれのセルに設置された大型のモニター画面のことだった。暮らしに必要な知識の大半はそのビジョンから得ている。
「まあ、そうだが・・ちょっと・・いや、随分違うんだ。」
キラはそう言うと、説の中央部に置かれた小さなテーブルに近づくと、中央部の窪みに入れた。テーブルはすべてのセルに全く同じものがある。何のための窪みなのか、誰も知らなかった。窪みにユービックはきっちりと入った。
「ジオフロントを見せてくれ。」
キラが独り言のように呟くと、「承知シマシタ」と返事があり、すぐに、テーブルの上辺りが光り始める。
じっと見ていると、そこには細長い立体映像が浮かんでいる。
「何だ、これ!」
今度はプリムが驚いて言った。
「僕らの住んでるジオフロントの3D映像さ。・・・さあ、僕らのいるライフエリアを赤く示してくれ。」
キラの言葉に再び「承知シマシタ」と返事があり、空中に浮かんでいる3D映像のほんの一部が赤く変わった。
「ここが、僕らの住んでいるところ。ジオフロントのごくごく一部なんだ。」
赤く色づいたところは、ジオフロントの100分の一もないほど小さかった。
いや、言い換えると、ジオフロント全体が途轍もなく大きいという事なのだ。細長いジオフロントは、全長が20km、幅2km程度、天井は50mほどの薄っぺらい蒲鉾型をしている。ライフエリアはその一番端に位置している。
「中央を広い通路が貫いている。その両脇に幾つものエリアがあるんだ。」
3D映像に見入っていたプリムが、ふとつぶやいた。
「こんなに広いなら、何処か、他にもライフエリアみたいなところがあるんじゃないかな?」
素朴な疑問だった。ハンクも、プリムの言葉に、そうだよと頷いた。
プリムの疑問に答えたのは、ユービックだった。
「残念ながら、ライフエリア以外に、生命体の存在は確認できませんでした。」
先ほどとは違う、優しい女性の声だった。二人は驚いて顔を見合わせた。キラが言う。
「ユービックの中には・・いろんな人格が入っているんだ・・いや、先人類のあらゆる知識や意識が詰まっているみたいなんだ。質問をすると、それにふさわしい人が答えてくれる。おそらく、今のは、ユリアという博士だろう。医者かもしれない。判らない事を口にすると、ちゃんと答えてくれるんだ。」
キラの言葉を聞いて、アランが一瞬、そうかと何かひらめいたような表情をした。
「ここにあるのは、先人類が作った武器のようだ。僕たちが持っているグラディウスも先人類が作った剣だが・・。」
キラはそう言うと、小さな方を持ち上げて続ける。
「これは、スクロペラムというらしい。この先端から強い光が出て、当たったものが溶けてしまう。一瞬で、ウルシンを倒すことができる。それから、これはカニオン。大きな口から、同じように強い光が出る。遠くまでは届かないが、一気にたくさんのフォルミカを焼き殺すことができる。・・こんなものが、ジオフロントのAブロックにたくさん積まれていたよ。」
「じゃあ、これを持っていれば、もうウルシンもグロケンも、フォルミカだって怖がることはないな。」
ハンクが、スクロペラムを手にして嬉しそうにした。

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