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16.本当の運命 [AC30第1部グランドジオ]

「ああ、禁断のエリアには想像もつかないほど素晴らしいものがたくさんある。もっともっとあるに違いない。今みたいに息を殺して生きなくても済むかもしれないな・・。」
そう言いながら、キラの表情は曇っている。
「そうさ・・きっとそうさ。そうだ、キラ、明日はこのことをみんなに話そう。みんなも喜ぶに違いない。」
プリムも嬉しそうに言った。
「キラ、まだ、秘密があるんだろ?・・それに・・あの卵の事も・・正直にすべて話せよ。」
アランが再び落ち着いた様子で訊いた。
キラはアランの顔を見乍ら、一つ溜息をついてから、ユービックに話しかけた。
「ライブカプセルを見せてくれ。」
「承知シマシタ。」
再び機械的な声がすると、先ほどと同様に、白い球体の3D映像が現れた。
「おお・・こいつだ・・。ライブカプセルって言うのか。」
プリムが言った。
「これは、ライブカプセル。中に人が入れる。パシフィックフロントの救命用の道具さ。緊急の時に、フロントを脱出する際、中に入るんだ。仮死状態で命を守ってくれる。それは100年以上耐えうるほどのものなんだ。」
キラが言うと、3D映像の卵が半分に割れ、中から膝を抱えた状態の人間が現れた。
「パシフィックフロント?」
プリムが訊く。
「ああ、このジオフロントの様に、先人類が作ったものさ。海に浮かんでいる。ここよりもっと大きいものもあったようだ。もっとも良い環境へ移動する。そこには、ウルシンやグロケンは居ない。皆、地表で生活しているようだ。食べ物にも困らない。・・まるで楽園だ。」
キラは、先ほどよりももっと深刻な表情で話した。
「そんなところがあるなら、行ってみたいなあ・・虫たちに怯えなくて済むなんて夢みたいだ。」
ハンクが言う。
「その・・ライブカプセルが流れてきたってことは、近くにパシフィックフロントが居るってことじゃないのか?」
プリムが続ける。
「そうか・・きっとそうだ。・・なあ、キラ、明日、また海へ行くんだろ?じゃあ、その・・パシフィックフロントを探そう。そこへみんなで移り住めばいい。」
そこまで聞いて、アランが呆れた表情で言った。
「緊急脱出用のカプセルがあるってことは、パシフィックフロントで何か起きたってことだろ?だから逃げ出した。そこへ行ってどうする。それに、今、浜に流れ着いたからってすぐ傍に居るとは限らない。100年も耐えられるとすれば、もっとずっと昔に海に落ちたかもしれないじゃないか。・・まあ、そうでなくても、ここに住んでいる皆をどうやって海を渡らせるつもりだ。泳いでいくのか?・・海にだって恐ろしい生き物はたくさんいるんだ。どうにもならないさ。」
それを聞いて、ハンクとプリムは意気消沈した。
「なあ、キラ。俺たちに話したかったのはそんな事なのか?」
再びアランはキラに問う。キラはベッドに腰掛け、少し考えてから言った。
「みんなに話したかったのはそういう事じゃないんだ。・・・ユービック、もう一度、ジオフロントを出してくれ。」
3D映像が現れる。
「これだけの素晴らしいものがあるのに、どうして先人類は滅んだと思う?」
ハンクとプリムが顔を見合わせる。そして、ハンクが答えた。
「恐ろしい病気が流行して、皆、死んだって教えられたよな。」
「ああそうだ。だから、禁断のエリアは閉じられ、入ることを禁じられていたんだ。」
プリムが言うと、キラが残念そうな表情で、首を横に振る
「いや、そうじゃないんだ。病気なんかじゃない。この、ジオフロントの欠陥のせいだったんだ。」
「欠陥?」
「ああ・・それはいつか起こると予測されていたことだったんだ。」
キラはそう言うと、3D映像に視線を移した。

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