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19.アランの告白 [AC30第1部グランドジオ]

翌朝、4人はいつもよりも随分早く出発した。
いつもなら、何かとおしゃべりなハンクがずっと沈黙を守っている。プリムも同様だった。昨日のキラからの告白は余りにも衝撃的だった。おそらく、二人ともまともに眠っていないに違いなかった。
もう何度か通った道であったため、ハンクとプリムが先を歩いた。グロケンの動きに注意を払いながら、慎重に進む。その後ろをアランが歩き、一番最後をキラが歩く。
ようやく、海が見えた時、萱野原の中に身を隠して、4人は少し休憩する事にした。
ハンクとプリムは、キラと少し距離を置いたところに座った。まだ、キラと言葉を交わす気分ではなかった。
キラがアランの傍に腰を下ろした。そして、ハンクやプリムには聞こえないように小声で言った。
「なあ、アラン、禁断のエリアの事なんだけど・・。」
アランは、何も聞こえなかったな素振りで、キラの方には向かず、独り言のように「なんだ?」と答えた。
「お前、あそこに行った事があるんじゃないか?」
「どうしてそう思うんだ?」
「いや・・昨日、話していた時、お前は何か初めて聞いたような感じじゃなかったから・・・。」
しばらく、アランは黙ったままだったが、一度、目を閉じてから答えた。
「いや、・・・だが、あの扉は知っていた。・・・・・お前と同じように、導師様に相談したいことがありセルに行ったんだ。だが、会えなかった。その時、あの扉を見つけたんだ。」
「入ったのか?」
「ああ、扉を開けて中に入った。お前の様に通路を歩いて行った。・・だが、あの扉は・・開けられなかった。怖かったんだ。・・・見せたかったものがあるんだ。」
アランはそう言うと、背中のカバンの中から、1枚の紙を取り出した。
「それは?」
キラが訊くと、アランがそっと広げながら言った。
「禁断のエリアに入る扉に貼られていたものだ。読んでみてくれ。」
キラはアランからその髪を受け取った。その紙は随分古びていて、黄色く変わっていた。
『選ばれし者の勇者よ。扉を開け、未来を拓くべし。命を懸け、われら人類を救い給え。』
その文字は、茶色く変色していた。ペンや筆で書いたものではない。指に血を塗り書いたものだった。
「それを見た時、とても怖くて、あの扉を開けることができなかった。俺は勇者にはなれないと・・」
アランは自らを恥じるように告白した。
「あのまま、貼り紙があれば、僕も入らなかったさ。」
キラはアランを慰めるように言う。
「お前は怖くないか?・・・それはきっと先人類が書いたものだ。・・相当の覚悟をもって書いたに違いない。・・」
「ああ・・怖いさ。だが、もう扉は開けてしまったんだ。そして、ジオフロントに危機が迫っている事を知った。後戻りはできないだろ?何もしなければ、ジオフロントの全ての人々は10年後には辛い暮らしを強いられる。おそらく、その後、死に絶えるに違いない。・・・自分にどんなことができるか判らないが・・何もしないでいるわけにはいかないんだ。僕らの未来なんだ。」
キラは覚悟を決めたように言いきった。
「ああ・・そうだな・・。もう道はないんだな。」
アランはそう言うと、キラから紙を受け取り再びカバンにしまうと、周囲の様子を伺いながら立ちあがった。
「そろそろ行こうか。」
そう、声を掛けたが、ハンクとプリムの返事がない。それほど離れは場所に居たはずはなかった。
「ハンク!プリム!」
そう呼びかけながら、萱を掻き分けて彼らが居たはずの場所へ向かった。だが、二人の姿はなく、カバンだけが残されている。
「ハンク、プリム!」
異変に気付いて、キラも、呼び掛ける。だが、返事はない。
「どこだ、ハンク、プリム!」
萱野原で見通しが利かない。必死に掻き分け乍ら辺りを探す。目の前をずるずると、黒い帯のようなものが動いた気がした。

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