SSブログ

20.ドラコ [AC30第1部グランドジオ]

黒い帯のようなものが過ぎ去った跡は、萱がなぎ倒され、まるで通路の様になっていた。ふと見ると、そこにはハンクが腰を抜かした状態で座り込んでいた。
「ハンク、無事か?」とアランが駆け寄る。
ハンクは青ざめた表情でぶるぶると震えている。
「プリムは?プリムはどこだ?」
アランが訊くと、ハンクが震える指で通り過ぎた黒い帯の方を指した。萱野原の先に見えるのは、黒い帯。それは、ドラコと呼ばれる大蛇だった。全長50m以上はある。胴回りだけで人間を超える大きさだった。毒は持っていない。だが、その巨体で何でも一飲みしてしまう。全身真っ黒で音もなく近寄れるほど機敏でもある。巨体ゆえに、数は多くない。だから、これまで、ジオフロントの人間でもほんの数人しか出会ったものは居なかった。いや、出会った者は二度と戻って来なかっただけだった。
人の気配に気づいたのか、ドラコは急に向きを変えた。そしてさらに頭を持ち上げて3人に狙いをつけたようだった。
「ジャー、ジャー!ジャー!!」
特有の音を発して威嚇を始める。アランが、すぐに、グラディウスを構えた。
しかし、目の前のドラコの巨体には余りに頼りない武器だった。一刺しする事はできるだろうが、致命傷を与える事などできそうになかった。頭を持ち上げ威嚇するドラコ。その腹部辺りが膨らんでいるのが見えた。プリムは飲み込まれたのだと判った。
「アラン、下がれ!危ない!」
キラが叫ぶと同時に、ドラコのぱっくりと開いた口が襲ってくる。横に跳びはねて辛うじて身をかわした。ドラコはゆっくりと余裕をもって体勢を戻す。まるで、攻撃される事はないと判り切っている様に見えた。
次は、キラが標的になった。
少し、ドラコが右に回り込むような姿勢を取った。キラは反対側へじりじりと動いていく。1、2とリズムを取るようにドラコの頭が左右に揺れる。次の瞬間、一気に大きく開いた口が襲ってくる。キラは大きく右に跳ねて身をかわす。
再び、ドラコは頭を持ち上げ、キラに狙いをつける。キラは、グラディウスを持っていない。
次に、ドラコが大きな口を開いて迫った時、キラは高く飛び上がり、ドラコの頭を超えた。そして、ドラコの胴体に飛び乗った。すぐにドラコは頭を180度回転させる。
しかし、胴体に跨るキラをそのまま飲み込むことはできない。次に、尻尾を高く振り上げ胴体に跨るキラを振り落とそうとする。だが、キラは胴体の脇にひらりと降り、一旦、身を隠した。
ドラコの体は、頭と尻尾がおかしな恰好となった。ドラコは一旦体勢を立て直そうとゆっくりと蜷局を巻き始める。その隙に、キラがドラコの頭の後ろに回り込んだ。
次の瞬間、ピカッと赤い閃光が走ったように見えた。すると、ドラコの頭がドサッとアランの足元に落ちてきた。少し遅れて、太い胴体もドスンと落ちてきた。ドラコは頭が綺麗に切り取られた状態になっていた。
何が起きたのかしばらく判らなかった。
「大丈夫か?」
キラがアランとハンクのところへやってくる。
「今のは・・一体、何が起きたんだ?」
ハンクがようやく落ち着いた様子で訊いた。
「そんな事より、プリムだ・・飲み込まれたばかりなら・・きっとまだ・・。」
キラはそう言いながら、横たわるドラコの胴体を、グラディウスで急いで切り開く。大きく膨らんだ辺りを切り開くと、ぐったりとしたプリムの姿が見えた。
「よし・・引っ張りだすんだ。」
アランが声を掛け、プリムの体を掴んで、引き出す。
ドラコのぬるっとした体液に塗れたプリムの体は掴みづらかったが、三人で必死にひっぱりだした。
すぐに、キラがプリムの胸に耳を当てて、心臓の鼓動を確認する。そして、プリムの胸を一度強く叩く。その拍子に、プリムが大きく息を吸った。
「もう大丈夫だ。・・あちこち痛みはあるだろうが・・。」
キラが言うと、ハンクは半べそで、プリムの顔を見る。ゆっくりと呼吸をしているプリムにようやく安堵したようだった。

nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0