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21.スクロペラム [AC30第1部グランドジオ]

すぐにプリムが意識を回復した。
だが、飲み込まれた時、腕や足を痛めて動くことはできなかった。同時に、強いショックのせいで、言葉が出ないようだった。ハンクはプリムに寄り添うようにして、ずっと容態を確認している。
それを見乍ら、アランがキラに訊いた。
「さっきの事だが・・・あの光は一体・・。」
「ああ、これを使った。スクロペラムだ。ここを引くと強い光が出て、当たったものが一瞬で焼き切れる。これでドラコの体を切断したのさ。」
「そんなものを持ってきていたのか?」
「ああ・・何かの役に立てばと思って持ち歩いていたんだ。」
キラはそう言うと、スクロペラムをアランに手渡した。アランは注意深く小さな部品まで覗き込むようにした。
「何度か使ったことがあるのか?」
アランの問いに、キラが少し躊躇いがちに言った。
「ああ・・以前、フォルミカ3匹もこれで倒した。その時は、頭を狙った。一瞬で頭が吹き飛んだよ。」
「そうだったのか・・。」
キラの答えにアランはあきれた顔をした。
「今日はもう帰ろう。プリムを早く連れて帰って、ガウラに診せた方が良い。」
キラが言うと、二人も同意した。
「その前に、ちょっと・・」
アランは立ち上がると、グラディウスを取り出した。そして、ドラコの胴体を切り始める。そして、ちょうど背負えるほどの大きさの肉片をいくつか作ると、カバンからネットを取りだし、積め始めた。
「せめてこれくらい持ち帰らないとな・・。プリムは、ハンクが背負ってやれるだろ?さあ、行こう。」
キラもいくつかの肉片を背負い、先導した。何とか、日暮れ前までにジオフロントに着いた。

「どうした?いったい何があったんだ!」
4人が戻ると、キラの父が血相を変えてやってきた。
「ドラコに襲われました。」
キラが答える。
「ドラコに?・・近くにドラコが現れたのか!・・それにしても、よく無事で戻れたものだ。」
「それより、プリムが飲み込まれて・・体を痛めたみたいです。すぐに、ガウラに診せないと・・・。」
そう話しているうちに、ガウラが現れた。
「すぐに、ホスピタルブロックへ・・キラ、手伝って。」
キラとハンクは、プリムをホスピタルブロックへ運び込んだ。
アランが、持ち帰ったドラコの肉の塊をコムブロックのテーブルの上に広げると、一族の者たちが一斉に集まってきた。
「こんなにたくさん、しばらく空腹から解放されそうね。」
キラの母が嬉しそうに言う。
「随分大きなドラコでした。キラが倒したんです。」
アランが言うと、キラの父は息子を誇らしく感じ、嬉しそうに言った。
「これほどの大きさなら、しばらく困らない。まだまだあるだろう。明日、男たちで肉を取りに行くんだ。」
ジオフロントにとって、ドラコの肉は貴重だった。
樹の実や虫たちを主な食糧としている中で、ドラコの肉は、極めて貴重なタンパク質なのだ。
数年に一度、ドラコが現れると、命を奪われることを覚悟で男たちは狩りに行く。
ウルシンもおそろしいが、ドラコはすばやく音もなく近寄る。その上、巨体であり、グラディウスでは小さな傷を負わせるのが精いっぱいなのだ。何人かの男が総がかりで攻撃してもそうたやすく倒せるものではない。一番効果的な方法は、誰かが飲み込まれる事だった。そうすればしばらく、ドラコの動きが停まる。その隙に一斉に攻撃するしかない。これまでもそうやって何とか繋いできたのだった。
今回も、プリムが飲み込まれたことでドラコに隙ができ、そこをキラが何とか急所を突いたのだと誰もが考えた。
アランは、沸き立つ男たちをよそに、一人、自分のセルに戻った。


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