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22.プリムの治療 [AC30第1部グランドジオ]

ホスピタルブロックへ運び込まれたプリムはすぐに診察台の上に寝かされた。意識はしっかりしているようだが、体の自由が利かない。なんだか全身が痺れたような感覚だった。
ガウラが診察台に横たわるプリムを診る。
「外傷はないようだけど・・・どこか、痛いところはない。」
「・・・いえ・・・どろ・・ぼ・・い・・だく・・。」
言葉がきちんと出て来ないプリムの様子にガウラが言った。
「ドラコに飲み込まれた時、消化液を浴びたでしょう。そのせいね。すぐに全身の状態を見ないと・・。」
そう言うと、黒いサングラスの様なものを着けると、診察台の横のスイッチを押す。
ゆっくりと頭部から透明のカバーが覆い始める。全身がすっぽりとカバーで覆われると、透明のカバーの上に青白い光の筋がゆっくりと走り出す。暫くすると、ガウラが大きな溜息をついた。
「やっぱり・・消化液で神経が侵されているみたいだわ。口からも飲み込んだのかもね・・・そんなに強い液じゃないようだけど・・・・それと・・右足と左手の骨が、折れているみたいね。・・・」
付き添っていたハンクが訊く。
「プリムは助かるんですよね・・。」
「大丈夫よ。ただ、消化液がどれくらいの強さかわからないから、しばらく様子を見ないと何とも言えないけど・・・・。」
ガウラの答えに、ハンクは少し戸惑いながらも、少し安堵した様子で、診察台に横たわるプリムの様子を見た。
「キラ、薬を持ってきて。解毒剤と痛み止め、それと骨形成促進の薬が必要なの。」
「はい。」
キラは薬剤庫に入り手早く薬を取ってくると、ガウラに渡した。ガウラがすぐに診察台にセットする。すると、カバーの中に霧状に薬剤が充満していく。全身に素早く吸収されていく。
「しばらくは様子を見る必要があるから、プリムはここに居てもらうわ。」
プリムの治療が終わり、ガウラが言うと、ハンクは「じゃあ、また明日来るよ」と言って自分のセルに戻った。プリムは鎮痛剤が効いている様子で静かに眠っている。
「キラ、ちょっと良い?」
ガウラはそう言うと、診察台のあるブースの奥にある、小部屋に入って行った。キラも後をついて入って行った。そこはガウラが日ごろ使っている研究室だった。あちこちに調合し掛けの薬剤や治療器具が置かれている。
「そこらに座って・・。」
ガウラはそう言うと傍らにあるキッチンの奥に入り、カップの飲み物を持ってきてキラに手渡した。
「プリムはおそらく春ごろまでは満足に動けないでしょうね。・・骨折が治っても、神経がやられているから、歩くことができるかどうか・・・まあ、命があっただけ奇跡よね。」
ガウラは、コップの飲み物を一口飲んだ。この時代、飲料はほとんど、野生から集めた植物をすり潰し粉末にしたものを水で戻したものだった。甘味料はあるものの、貴重なため僅かしか使えない。だが、キラもガウラも幼い頃からこうしたものだけを口にしているため、何の不満もなかった。この日は、先日、キラたちが採ってきたフィリクスの果汁を足したもので、普段口にするもよりも甘く、そして、アルコールを含んでいた。
キラは一口飲んで、ちょっと驚いた表情を浮かべた。
「これ、フィリクスの果汁ですね。それとアルコールも入っているようでけど・・」
「ええ、そうよ。良いでしょ?少しくらい。まだ、早かったかしら?」
ガウラはちょっと悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「いえ。」
キラはそう言うと、もう一口飲んだ。体の中が少し熱くなった。
「それにしてもドラコを退治するなんてすごいわねえ。・・・あの肉片からすると余程の大きさだったんでしょ?グラディウスで切り付ける程度じゃ無理よね。どうやったの?・・・」
ガウラは椅子に座り、足を組み直してちょっと妖艶な笑みを浮かべている。
キラは答えに困った。その様子を見てガウラが続ける。
「ねえ、キラ、何か隠している事があるでしょ?」
キラはドキッとした。

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