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3.地表の様子 [AC30第1部グランドジオ]

最後のチャンバーで順番を待っている間、今日の計画を相談する。
「今日は、海に行ってみないか?」
キラが切り出した。
「それは良い。たくさん、貝を集めて持ち帰ろう。ちょっと重いが、保存ができるからな。」
そう答えたのは、プリムだった。
プリムはキラよりも8歳ほど年上の25歳だったが、猟に出るのはまだ2年目だった。それまではプリムの父が猟に出る役目だった。プリムの父は2年前にウルシンに襲われ、絶命していた。

「だが、海までは遠いんだろ?ウルシンに見つかるかもしれないじゃないか。食べられるかもしれない。このあたりで草を集めれば良いじゃないか。」
そう心配げな声を出したのは、ハンクだった。
ハンクもプリムと同い年であったが、恐ろしく臆病者で有名だった。
若者たちの中では誰よりも体が大きく力持ちではあるのだが、とにかく臆病であったために、ジオフロントのすぐ近くで、草や花、実の採集しかやろうとしなかった。

「また、ハンクの怖がりが出たな。・・なあ、ハンク、お前の集める草や花の中には毒があって、食べるまでに手間がかかるんだってさ。もっと、良いものを集めて来いって、クライブント様が言ってたぞ。」
ハンクを少し窘めるように言ったのは、アランだった。
アランは、キラと同い年の17歳で、キラと同様にもう10歳から猟に出ている。キラの父がウルシンに襲われた時、アランの父も一緒だった。アランの父が先にウルシンに見つかり襲われた。それを救おうとキラの父アルスはウルシンと闘い、足を奪われたのだった。残念ながら、アランの父は、ウルシンに頭を食われてしまって絶命していた。

「導師様が?お前、導師様に会ったのか?」
ハンクが訊く。
「いや、直接会ったわけじゃないが・・うちの母さんが俺に言ったんだ。導師様に、取ってきた草や花を見せた時・・と言っても、いつもの様に、ビジョン越しだが・・・・草や花を細かく仕分けて、毒の抜き方を教えられたそうだ。随分と手間のかかるものもあったみたいだぞ。それに、余り美味くないじゃないか。」
アランが答える。
クライブント様とは、導師様と呼ばれ、彼らの一族の長とも言うべき人物であった。
最も長老で一族を率いてきた。かつて、一人で猟に出て、体長5mほどのウルシンを倒したことがあったと聞かされていた。ライフツリーの最も高い場所にあるセルボックスを住居とし、常に、一族全体を見守っている。もうかなりの高齢で、若い者たちはその姿を見たことはなかった。いや、ライフツリーの住民のほとんどの者が存在は認めているが姿を見たものは居ないのだった。
「よし、キラの言う通り、今年はしばらく海へ行こう。大丈夫さ、川沿いに下っていけば、ウルシンたちには見つからない。グロケンは居るだろうが、あいつらは動きが鈍いから、捕まることはないさ。旨くすれば、グロケンの卵も持ち帰れるかも知れないからな。」

グロケンとは、巨大なカエルの事だった。こげ茶色をしていて、体調は3mほどで、水辺に居る。
ウルシンは、グロケンを襲わない。グロケンの体表にある黒い水泡上の液体がウルシンの神経麻痺を起す強い毒を持っているためだった。

4人は、ジオフロントの出入口から、ひょいと顔を出し、周囲の様子を確認した後、背よりも高く伸びたシダの葉に隠れるようにして、しばらく進み、熱帯雨林という表現が最もふさわしい、森の中を抜けて、大きな川に出た。川の向こう岸は見えないほど広い流れである。
アランが言った通り、グロケンが何匹も川の中に浸かったような状態で座っていて、置物のように動かない。
グロケンは、じっと動かない姿勢を保って、自分の近くにやってきた小型の昆虫や魚など、とにかく動くものは長い舌で絡めとって食糧にする。キラたちも近づきすぎると長い舌に巻き取られて呑み込まれる恐れがあった。
キラたちは、グロケンとの距離を保つように、川べりを腰辺りまで水に浸かった状態で、海へ向けて下って行った。


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