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24.二人の秘密 [AC30第1部グランドジオ]

「おそらく1日あればそこまで行けるでしょう。・・ただ・・閉鎖されて長い時間が経っているんです。まだ使えるかどうかわかりませんよ。」
「そうかもしれないけど・・そこに一縷の望みがあるのなら・・何とかしたいのよ。」
ガウラの願いは充分に理解できた。
キラも、隣接するエナジーブロックへ行ってみたいと考えていた。
「中はそんなにひどい状態なの?」
「いえ・・ただ、ほとんど光がなくて・・ぼんやりとしか見えなかったんですが・・・とにかく広いんです。ユービックに道案内を頼めば、おそらく行けるでしょう。・・」
「そう・・。」
ガウラは少し不安そうな表情を浮かべた。
ユービックを通じてある程度情報は得ているはずだった。だが、余りにも想像を超えているに違いない。まだ、現実のものとは受け止められない状態なのかもしれなかった。
「判りました。ただ、今は無理です。冬になるまでにあのライブカプセルに行くことが先なんです。冬になれば氷に閉ざされ、春になれば海へ流れ出してしまうかもしれないんです。その後、一緒に行きましょう。」
キラの提案に、ガウラは同意した。
「ええ・・そうね。良いわ。冬になった方が、私も時間ができるし・・」
「それと・・このことは全て秘密にしてください。アランとハンク、プリムは知っていますが・・。まだ、皆に知られるわけにはいきません。」
「そうね。皆が知れば、パニックになるに違いないわね。約束するわ。あなたも約束して、これから、私には何でも話してよね。お願い。」
「はい。」
キラはガウラと約束した。
「それと・・・。あの・・ガウラさん、導師様の事なんですけど・・・。」
ガウラは、すぐにピンと来たような表情を見せて、言った。
「導師様・・・本当は居ないんじゃないかって言うんでしょ?」
ガウラの答えにキラは驚いた。
「ええ・・あれは・・。」
「キラ、あなたの考えは?」
「・・何か、人間じゃなくて・・そう・・ユービックにようなシステムなんじゃないかって・・・。」
キラの答えを聞いて、ガウラは少し微笑みながら言った。
「ええそうよ。導師様なんて、どこにも居ないわよ。そんな事、大人はみんな判ってる事よ。」
ガウラがあっさり答えたことで、キラは少し拍子抜けしたような感覚を覚えた。
「それなら、なぜ。みんな毎朝、有難くお話を聞いてるんですか?」
「そうね・・・。」
ガウラは一度席を立ち、殻になったグラスを持ち、キッチンへ飲み物を取りに行き、ゆっくりと戻ってきた。再び椅子に座ると、目を閉じて少し考えてから、口を開いた。
「あなたの言う通り、あれは、人じゃないわ。先人類が作り出したものよ。ここへ残された私たちの先祖は、選ばれた者たちだったけれど・・・だからこそ、纏めるべき人が存在しなかった。」
ガウラは一旦そこまで話して、ドリンクに口をつけた。
「おそらく、しばらくは平和に暮らせたはず。でも、もしも力で抑え込もうとする者が現れたらどうなる?そして、その者が、誤った方向へ導くことになれば、人類が滅亡する事につながる。それを避けるために、先人類は正しく導く者を置くことにしたの。ここに住む誰もがその事を理解し、従ってきたというわけよ。」
キラは、ガウラの話を神妙な顔で聞いた。
「キラ、導師の事は大したことじゃないわ。それよりも私たちの未来をどうするか・・あなたこそが未来を拓く者になるべきなのよ。良いわね。」
ガウラはそう言うと、プリムの様子を診るため席を立った。キラは、自分のセルに戻って行った。


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