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25.ドラコの肉 [AC30第1部グランドジオ]

翌朝、一族の動ける男たちは全員、ドラコの肉を取りに行くため地表に出た。
アランが先頭を歩き道案内する。外気温が水分と下がり始めていて、グロケンは深い水の中に身を潜めたままだった。川沿いを列を成して歩いて行く。萱野原に入ると、ドラコの特有の臭気が感じられた。
「この先だ。ここからは、二手に分かれよう。一方は、肉を切り取る役だ。一方は万一に備えて周囲を固める。さあ、取りかかろう。」
アランの号令で男たちが働き始める。ドラコの肉を食べるような虫たちは居なかったが、人間を餌にする虫は多い。特に、ウルシンには注意が必要だった。これだけ大勢の人間がいるとなれば、当然遠くからも察知できるはずだった。そのために、男たちは二手に分かれたのだった。ドラコの死骸を取り囲むように男たちがグラディウスを手にウルシンを迎え撃つ。円の中で男たちが作業をする。ドラコの巨体は、背負えるほどの大きさに切り取られていく。
作業が始まってしばらくして、アランがキラに声を掛けた。
「キラ、あそこへ行こう。」
指差した先は、フィリクスの樹があるところだった。
「俺たちは、フィリクスの樹へ行く。あそこに上って周囲を見張ることにする。ウルシンが近づいたら知らせる。」
アランはそう言うと、キラとともに、フィリクスへ向かった。
「さあ、キラ、登って実を切り落としてくれ。それと周囲の様子もな。」
キラは頷くと、するすると昇って行く。まだ、実がたくさんついている。5つほど切り落とすと下でアランが受け取った。
「キラ、どうだ?」
下からアランが声を掛ける。周囲にはウルシンの姿はない様子だった。そして、一旦、浜の方へ視線を向けた。昨日同様、白いライブカプセルがあった。
「大丈夫だ。周囲には何もいない。浜は昨日と変わりない。」
キラはそう言うと、パッと飛び降りた。
「よし。戻ろう。」
二人は作業をしている男たちの許へ向かった。
「さあ。良いものを取ってきた。昼飯にしよう。」
作業の手を止めて、男たちはフィリクスの実を受け取り、二つに割り、中の実を頬張った。
食事の後も作業を続け、男たちは背負えるだけの肉片をもってジオフロントへ戻った。
作業は4日ほど続き、あらかた、肉片を取り終えた。最後の作業を終えた帰り道、ちらちらと雪が降り始めた。
ドラコの肉はストックブロックで冷凍保存された。
「これで2年ほどはひもじい思いをせずに済む。何とか、冬になる前に終えて良かった。」
キラの父は満足そうに積み上げられたドラコの肉を見上げた。

その夜の事、キラとアランとハンクは、プリムの見舞いのために、ホスピタルブロックに居た。
プリムはまだ意識がはっきりしていないようだった。
「なかなか回復しないのよ。・・・・消化液が思ったより神経を侵しているみたいなの。・・」
「もっと効果のある薬があるんじゃないんですか?」
ハンクが訊く。
「ここにある薬は全部試してみたんだけどね。・・・。」
ガウラは少し戸惑うように言った。
キラは、アランとハンクにガウラとの約束話をすでに伝えていた。だから、ガウラの言葉が何を意味するか、すぐにわかった。
「やっぱり、禁断のエリアに行かないと・・。」
キラが言う。
「その時は俺も一緒に行く。一人でも多ければ、たくさんの薬を持ち帰れるだろう?」
ハンクも応えるように言った。
「ハンクは力持ちだからな。」
アランが少し茶化すように言った。


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