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26.浜へ [AC30第1部グランドジオ]

「ガウラさん、明日、浜へ行きます。」
キラが言う。
極寒の季節になれば、深い雪に一面が覆われ、海さえも凍りつく。そうなれば、あのライブカプセルのところへは近づけなくなる。そして、春を迎えるころには、溶けだした氷に飲み込まれて再び漂流するに違いなかった。ライブカプセルにたどり着ける期間はおそらくもう数日もない。
「もう、グロケンたちは冬眠に入るだろう。ウルシンの動きも鈍くなる。明日は夜明け前に出発しよう。」
アランが言うとハンクも頷いて言った。
「ああ、そうだ。そしたら、次は、禁断のエリアだ。プリムの為にも・・良い薬を見つけなくちゃ。」
それを聞いて、ガウラが言う。
「ライブカプセルには注意しなさいよ。中の人を守る為のモノだから、近寄るものを攻撃してくるかもしれないわ。中から何か飛び出してくるかもしれない。とにかく、注意してよ。」
「はい。」
キラが神妙な顔をして答えた。
「キラ、あなたのユービックも持っていきなさい。地表で使えるかどうかわからないけど・・・ユービック同士はつながっているから。何かあったら、ユービックで伝えて。」

翌朝、日が昇らぬうちに3人はジオフロントを後にした。
薄らの雪が積もり始めていた。川は静かだった。黙々と3人は歩いて浜へ出た。
岩に挟まれるように白い“卵”があった。昨日のガウラの言葉が浮かんで、3人はゆっくりと“卵”に近づく。
特に変化は起きなかった。ぐるっと取り囲み、ゆっくりと卵の表面に手を当ててみる。滑らかな表面はひんやりとしている。
「なあ、キラ。どうする?」
ハンクが小さな声で訊いた。
「どこかに何かスイッチのようなものがあるはずなんだが・・・。」
キラは卵の表面を丹念に調べる。しかし、そんな突起物は見つからなかった。
「このままじゃ、ジオフロントまで運べないしな・・・。」
アランは卵の表面におでこをくっつけるようにして言う。
「持ち上げてみるか?」
ハンクが抱えようとした。だが、びくともしないほど重かった。
苛立ったアランが、グラディウスを手にして卵に一撃を加えた。
キーンという音はしたが、かすり傷さえつかなかった。
キラはカバンの中からユービックを取り出し起動した。そして、ライブカプセルの3D映像を出して、開く方法を見つけようとした。しかし、ユービックには、ライブカプセルの構造に関する情報がなかった。
「ユリア、教えてくれ。ライブカプセルはどうやったら開くんだ?」
キラがユービックに語りかける。
画面にユリアが現れた。
「ライブカプセルは、オーシャンフロントで開発されたもので、詳細な情報は持っていません。」
「判る範囲で何かないかい?」
「ジオフロントで同種のものを開発するとしたら、ロック解除の暗号や、キーを設定するでしょう。それで内部のコンピューターが作動するようなシステムが一般的と考えます。」
「キー?」
「ええ、そうです。ジオフロント建設当時の技術であれば、光センサ―内臓型でしょう。その後の技術だと判りません。」
ユービックのユリアは丁寧に答えてくれる。キラは少し考えてから言った。
「ガウラさんに繋げられるかい?」
「承知シマシタ」機械的な音声の反応があった。


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