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28.美しい少女 [AC30第1部グランドジオ]

「人間だよな?」
一連の作業をじっと見つめていたアランが呟いた。
「ああ・・たぶん・・そうだろう・・。」
ハンクもぼーっとした様子で呟く。
すっかり二人はこの世のものとは思えない少女の美しさに魅せられてしまったようだった。
キラは想定していた事で余り動揺はしていない様子だった。それよりも、ライブカプセルの様子が気になっていた。

『ライブスーツ装着シマス』
ちいさくなっていくライブカプセルが急に声を発した。
すると、裸で横たわる少女の傍らに5cmほどの黒く四角い箱が転がり出て、少女の背中に張り付いた。すると、箱から黒い繊維がシュルシュルと伸び始めて、全身を覆い始めた。ほぼ全身が黒い繊維に覆われると、繊維の色が白く変わっていく。それは、キラたちが着ているライブスーツと同じものだった。
『装着完了。ミッション完了。』
再び声が響くと、ライブスーツに身を包んだ少女が寝返りを打つように上向きになり全身を伸ばし、大きく息を吐いた。
砂浜に横たわる少女は、息はしているが目を開けなかった。
「大丈夫かな・・・。」
ハンクが少女の顔を覗き込むようにして言う。押しのけるようにアランも覗き込んだ。
「息はしてるようだが・・・・。どうする、キラ?」
キラはアランの声に返答しなかった。
キラの視線は、少女ではなく、ずっとライブスーツに向いていた。
人よりもはるかに大きかったはずのライブカプセルは、少女を「排出」した後、次第に小さくなっていて、終に、30㎝ほどのボールくらいの大きさになっていた。
「おい、キラ、聞いてるのか!」
アランが声を荒げた。
「いや、すまん。・・ライブカプセルに気を取られてしまって・・・。」
ハンクとアランは、少女の両側に跪くようにして少女の容態を気にしている。キラは少女の頭の方に跪いて、少女の様子を伺う。
「息はしているみたいだが・・・。」
すると、少女のライブスーツの色が白からピンク色に変化した。発熱しているようだった。次に、スーツがブルーに替わった時、少女が薄らと目を開けた。ちょうど、覗き込んでいたキラと目が合う形になった。少女の眼は深いブルーだった。白い肌、くっきりとした鼻筋、大きな瞳。キラたちの一族とは全く違う顔立ちをしている。キラの鼓動が急に激しく打ち始める。キラはこれまで感じたことのない感覚を感じていた。
「目が覚めたかい?」
脇からハンクが声を掛ける。少女は仰向けになったまま、顔だけ動かしてハンクを見た。
「体、大丈夫か?」
今度はアランが訊いた。同じように、少女は、アランの方を見た。
「言葉が通じないのかもしれないな・・。」
返答をしない少女を見て、アランが言う。
「いや・・違うだろう。ライブカプセルは僕たちと同じ言葉を話したんだから。きっと戸惑っているんだろう。」
キラはそう言うと、ユービックを取り出して、ガウラに繋いだ。
「ガウラさん、カプセルの中には少女がいました。さっき、目覚めたところです。」
キラが言うと、ガウラが答えた。
「ユービックで彼女の様子を診せて。」
言われるまま、キラはユービックを彼女に向ける。ユービックを通じて、少女の様子がガウラの許へ届く。
「全身を映して。」
ユービック越しにガウラの声が響く。キラは、ユービックを少女の頭から足先までが見えるように、ゆっくりと動かしていく。

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