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30.帰路 [AC30第1部グランドジオ]

フローラは、フィリクスの実を膝の上に置き、スプーンで一口ずつ救って口に運んだ。
「俺の名はアラン、こいつがハンク・・それで。こっちがキラだ。」
一心に食べているフローラにアランが言うと、キラが答える。
「彼女はフローラ。やっぱり、オーシャンフロントから来たようだ。名前だけは判った。」
「そうか・・フローラ・・か・・良い名前だ・・。」
ハンクは根拠もなくそう言った。
「ところで、これからどうする?」
アランが言った。
「ガウラさんが言うとおり、しばらくしたら、彼女をジオフロントへ連れて行こう。」
キラが言うと、ハンクが不安げな表情を浮かべて言った。
「だけど・・みんな、驚くだろうな・・・ちゃんと受け入れてくれるかな?」
「じゃあ、ここへほっとくことができるのか!?」
アランがちょっと声を荒げる。
「いや・・そんなわけないけど・・・どう説明するんだ?」
ハンクがアランに訊く。アランはキラの顔を見る。
キラは、フィリクスの実を一心に食べているフローラの様子を見ながら考えた。.
「偶然、見つけた事にするんだ。フィリクスの実を取りに来て、偶然、浜で彼女を見つけたって・・。もちろん、こんな事は誰にも経験はないはず。ジオフロント以外に人が暮らしている事さえ、考えられない事だろう。だが、偶然見つけたことで通すんだ。まだ、オーシャンフロントの話をするのは早すぎる。彼女の記憶がはっきりして、オーシャンフロントの様子が分かったところで皆に教えればいいだろう。」
キラが言うと、アランも「そうだな」と同意し、ハンクも頷いた。
フローラがフィリクスの実を食べ終わったのを見て、キラが言った。
「さあ、ジオフロントへ行こう。そろそろ冷えてきた。早く戻らないと危険だ。・・フローラ、歩けるかい?」
フローラは立ち上がろうとしたが、ふらふらとして体が安定しない。長い間、膝を抱えた姿勢でいたことで運動機能は相当落ちているに違いなかった。
「背負って戻るしかなさそうだな。」
アランがそう言うと、フローラの前に跪いて、背中に乗るように言った。だが、フローラは嫌がった。
「俺の方が力持ちだから・・」
ハンクがそう言って同じように跪く。しかし、フローラは同じように嫌がった。まるで幼い子供の様だった。
「キラ、お前がおんぶしろ!」
アランが少し不機嫌そうにして言った。
キラが跪くと、フローラはすんなりと背に身を任せた。フローラの体は想像以上に軽かった。
「ああ。そうだ。ライブカプセルも持っていこう。ちょうど、フィリクスの実と同じくらいの大きさだから・・。」
キラが言うと、アランが、さっきフローラが食べたフィリクスの実の殻に小さくなったライブカプセルを押し込んだ。ちょうど収まるほど小さくなっていた。
こうして、3人はフローラを連れて、ジオフロントを目指した。

日が落ちる前になんとかジオフロントの入り口に辿り着いた。長い階段をゆっくりと降りていく。途中、いくつもの扉を開き、ゆっくりゆっくり降りる。
「コムブロックに入る前に、ガウラさんに連絡しよう。」
キラはユービックを取り出して、ガウラに連絡した。
『わかったわ。ホスピタルブロックの準備はできているわよ。彼女に、コムブロックに入ったらじっと目を閉じて苦しそうな表情を浮かべるように言って。皆が騒ぐ前に、彼女をホスピタルブロックへ運ぶの。良いわね。』
ガウラに言われたように、フローラに説明した。フローラはどういう事か良く判らないようだったが、とにかく、じっと目を閉じ何も言わないように言い聞かせた。
「よし、行こう。」
3人は長い階段を下り、コムブロックへ向かった。

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