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5.貝集め [AC30第1部グランドジオ]

残ったキラとプリムは、貝を集めることにして、アランたちとは反対側へ歩いた。
砂浜の先に、高い崖が聳えていて、その下辺りは岩礁が広がっている。
「岩の裂け目には気を付けた方が良い。小さいブクラが潜んでいるからな。あいつらは、殻ばかりだから捕まえても仕方ないんだ。それより、爪にやられると体中痺れるからな。」
キラがプリムに言う。
「ああ、判った。で、獲物は?」
「こいつさ。」
キラがそう言って岩の一部にグラディウスを突き立てる。すると、岩の一部が剥がれるようにめくれ上がった。キラがゆっくりとグラディウスを持ち上げると、薄い板状の貝が現れた。
「こいつら、岩と同化しているんだが、こうやって見つけることができる。10枚も取れれば、かなりの量になる。」
キラの言葉を聞いて、プリムも目の前の岩にグラディウスを突き立てた。しかし、カキンと音がしただけで何も起きなかった。「チッ」とプリムが舌打ちをした。
「よく見ると、表面が少しだけ黒っぽくて、何カ所か小さな穴がある。空気を吸う穴らしいんだ。そいつを見つければいいんだ。ビラルって言うらしいんだがな。」
取ろうとしているのは、アワビのような一枚貝の類だった。人の顔ほどの大きさがある。キラはそう言いながら、じっとあたりの岩を睨み付けた。
「ほら、こいつがそうだ!」
そう言って、グラディウスを突き立てると、同じようにめくれ上がってくる。
キラとプリムはしばらくその岩場でビラル取りに熱中した。
太陽が少し傾き始めた頃、それぞれ、猟を終えて、最初に足を踏み入れた場所に戻った。
ハンクとアランは、ブクラの爪を10本ほどを取っていた。キラとプリムも、30枚ほどのビラルを持っている。
背負っているバッグから、大きな網を取り出し、包み込む。網は強い形状記憶合金なのか、一旦広げて、獲物を並べると強い力で締め付け始め、随分と小さく固め上げた。体積が最初の5分の一ほどまで小さくなって、4人はそれぞれに分担して、袋を背負った。
「さあ、今日はこれくらいで帰ろう。日が落ちる前に、戻らなくては。」
「ああ、そうだな。少し急がなきゃ。」

4人は来た道を戻る。
「頭を下げて!」
先頭を歩いていた、キラが身振りを使って皆を制止する。
朝と比べて、萱野原の様子が少し違っている。風になびく萱の向こうに、頭を突き出して動くウルシンの姿が見えた。時々、ウルシンは、立ち止まってはきょろきょろ見回し、また、動き出す。時折、長い鎌を高く翳す。ウルシンが狩りをしている。
4人は暫く萱野原にうつ伏してじっとして、ウルシンが行き過ぎるのを待った。がさがさというウルシンの足音が遠ざかったのを確かめて、ゆっくりと動き出す。

萱野原を抜け、川に辿り着いた。今度は、グロケンが居る。
朝はまだ体温が上がらず、動きもほとんど鈍く、心配なかったが、帰り道は注意が必要だった。陽を浴び体温が上がったグロケンは動きが活発になる。大きくジャンプすれば、すぐに10mは飛んでくる。離れているからと安心はできない。できるだけ気づかれないよう静かに進まなければならない。
帰り道は、川には入れない。水の動きでグロケンは獲物を判断するからだった。
先頭をハンクが歩き、プリム、アラン、最後をキラが歩く。岸辺ギリギリのところをゆっくりと音を立てずに進むしかなかった。
キラとアランは、右手にグラディウスを構えたまま、グロケンの動きに目を光らせながらゆっくりゆっくりと進んだ。

4人がジオフロントの入り口に到達した頃には、もう夕日で周囲が赤く染まる時間だった。
「何とか無事に戻れたな。」
プリムの言葉に、一同はホッとした表情を浮かべた。そして、厚い扉を開き、中に入った。

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