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7.猟の代償 [AC30第1部グランドジオ]

「いや・・怖い処さ。油断をすれば命を落とす。このブクラだって、砂の中に隠れていて、鋭い爪で捕まえ食べてしまうんだ。もっとたくさん、そうした恐ろしい奴らがたくさんいる。」
サラは、たくさん並んだ食材を前にして、思わず手が停まってしまった。
「そんな恐ろしいブクラをどうやって捕まえたの?」
「ブクラを捕まえたのは、ハンクとアランさ。砂から飛び出してくる爪にグラディウスを突き立てるんだ。アランは狩猟の名人だ。」
キラが言うと少し離れた席に居たアランが、サラに向かって手を振って言った。
「どうだい?美味いだろ!」
「ええ・・。」
サラが少しだけ笑顔を見せて返事をする。
「明日も海へ行ってくるよ。大丈夫。グロケンとの付き合い方もわかってきたから、心配ないさ。」
キラは目の前のブクラの爪肉を掴むと豪快に噛みついた。

翌日から20日ほど、4人は海へ通い、たくさんの獲物を取ってきた。
キラたちの様子を知り、他の若者たちの中にも、海へ向かった者もいたが、余りの道のりの遠さに、辟易として、結局、続かなかった。

「キラ、あの空。」
アランがブクラの爪を抱えて引き揚げ乍ら、空を指さした。見上げると、真っ黒い雲が南の海から徐々に近づいているようだった。
「もう、そろそろ無理だな。」
キラが呟く。
「ああ・・あいつが来たらもうここまでは来れないな。」
プリムも残念そうにつぶやく。
4人は急いで帰り支度を始めた。川を上り、入口に辿り着くころには、頭上には黒い雲が覆うように広がり、ぽつぽつと雨が降り出してきた。
「なんとか、間に合ったな。」
ハンクはそう言うと、入口の扉に手をかけた。ヌルッとした感触があった。
「おや?」
「どうしたんだ?」
「これ・・何だろ?」
ハンクが、手のひらを広げて見せた。
ハンクが広げて見せた手は真っ赤に染まっている。
「それ・・血じゃないか?・・怪我したのか?」
プリムが確かめるようにハンクを見た。
「馬鹿言え、俺はどこも怪我してないぞ・・・。」
キラはすぐに気付いた。
「誰か、他のやつがけがをしたんだろう。急ごう。」
4人は急いで扉を開け、中に入る。
次の扉にも、血糊がべったりと付いている。幾つもある扉のことごとくに真っ赤な血が付いている。さらに、最後のチャンバーには大きな地の塊もあった。
急いで、螺旋階段を駆け下りて、コムブロックへ向かった。
コムブロックには、ベッドを囲むように、ひとが集まっている。年老いた女性がベッドに縋り付いて泣いている。すぐ脇に、アルスとネキが居るのが見えた。
「どうしたんです?」
人なみを分け入って、キラはアルスの傍までたどり着くと、二人に訊いた。
「ウルシンにやられたようだ。」
ベッドに横たわる若者は、息絶え絶えの状態だった。若者は、肩から背中にかけて切られた傷があり、まだ血が流れ出している。

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