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6.沼地 [AC30第2部カルディアストーン]

彗星の破片が落下したことで、地球規模の地殻変動が発生し、大陸は昔とは全く違っている。
中央に広がる山岳地帯には、5千メートル級の活火山がいくつも連なっていて、山体の上半分は万年雪に閉ざされている。また、有毒ガスや噴火による降灰、噴石の危険もあった。
二人は、こうした火山を避けながら、できるだけ静かな平地を選んで北上する事にした。
「しばらくは高く飛んでいくしかなさそうだな。」
キラが森の様子を見ながら言った。
「いや、木々の梢ぎりぎりを飛んで行こう。そのほうが手がかりも見つけやすいさ。」
アランはそう言うと、一気に下降し始めた。
「アラン、危ないぞ!気を付けろ!」
キラも仕方なく、木々の少し上辺りまで高度を下げて進んだ。
PCXが言う。
「下にはたくさんの虫が潜んでいます。注意してください。あまりに多すぎて、攻撃してくる虫の判別ができません。」
「俺に、任せろ!」
アランはそう言うと、肩に装着したカニオンを構えた。ふっと昨日のアントリオンに襲われた光景が頭を過る。
すーっとアランは上昇し、キラより少し前に出た。そして、肩に装着したカニオンの照準を前方下に向けた。そして、少し左右に体を動かしながら、発射する。強いレーザー光線が断続的に発射されると、前方の森に大きな爆発音と炎が立ちあがっていく。真っ黒い煙とともに、虫たちが空に飛ばされる。これまでに見たことのない、残虐な光景だった。その衝撃が森の中に広がっていく。すると、キラたちの周囲に、異様な羽音が響き始めた。強い攻撃を受けた虫たちが怒っている。その響きは徐々に強まっていく。
前方に黒い塊が帯状に連なり、渦を描いて空に昇り、その先端がキラたちに迫ってきた。
「虫たちが大群で襲ってきます。あと10秒で渦に巻き込まれます。逃げましょう。」
PCXが言う。
「逃げるって・・言ったって・・・。」
黒い虫たちの帯がほとんど360度取り囲んでいる。
「上空です。可能な限り上空へ。虫たちの飛べる高さには限界があります。」
PCXはそう言うと、自ら上空を目指した。キラもアランも、PCXの後を追って上昇する。
「もっと、早く!もっと!」
PCXはさらにスピードを上げた。二人も必死にPCXの後について上昇した。黒い虫の帯はある程度の高さまで上昇するとそれ以上は追って来ず、なんとか逃げ切れたようだった。上空1000mほどに達していた。
「もう大丈夫でしょう。」
PCXの言葉に二人は安堵した。
「もう闇雲に攻撃するのは止めにしよう。今回は逃げ切れたが、そううまくはいかない。」
キラは前方に視線を遣って言った。
「ああ・・済まなかった・・・もうこりごりだ・・。」
アランも懲りたようだった。
しばらくは上空高く飛んだ。キラが、視線の先に、何かキラリと光ったものに気づいた。
「PCX、前方の山裾に、何かあるんじゃないか?」
キラが言うと、PCXが光を点滅させた。何か探っているようだった。
「もう少し近づいてみましょう。」
PCXはそう言うと、二人よりもスピードを上げて、キラが指差した方向へ飛んで行った。二人はそのままのスピードでPCXの後を追う。
目の前には煙を吹く火山がいくつも連なっている。光ったのはその山の裾野辺りだった。切り立った崖、幾筋もの白い滝、近づくと大きな壁となって立ちはだかっている。その裾野には緑の森が広がっている。
「この先に、大きな空洞が、地中にあるようです。」
戻ってきたPCXが言った。
「もしかしたら、ジオフロントかもしれない。」
アランが言うと、PCXも言った。
「その可能性が高いです。急ぎましょう。」

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