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8.ジオフロント14 [AC30第2部カルディアストーン]

扉には「ジオフロント14」の文字が刻まれていた。
キラたちのジオフロントが73である事から見ると、随分と早い段階で造られたものと思われた。その当時は、おそらくこのような火山地帯ではなかったはずだった。
「おい・・開いているぞ。」
アランが言った。
キラたちのジオフロントの扉は、虫の進入や激しい気象からジオフロントを守るため、必要以上に固く閉ざされている。開閉するのも苦労していた。しかし、目の前の扉は半分ほど開いた状態になっていた。すぐ下にあるはずのチャンバーには、水が溜まっている。一見して、長い間使用されていなかったことが判った。だが、ジオフロントには何カ所も同じような通路があるはずだった。キラたちのジオフロントは、エナジーシステムの故障でごく一部のライフエリアだけしか使っていないが、正常に稼働しているのであれば、全長2kmに及ぶジオフロントの出入り口は相当の数があるはずだと考えられた。
「とにかく、中へ入ってみよう。」
キラが先に入った。足元には水が溜まっていた。その中を手探りで次の扉を探して、開く。溜まった水は空いた扉から次のチャンバーへ流れ落ちていく。そんな事を繰り返して行くうちに、徐々にチャンバーは大きくなる。
そして、いよいよジオフロント内部に入る扉まで辿り着いた。
「ちょっと待ってくれ、キラ。」
最後の扉に手を掛けた時、アランが言った。
「なあ・・もしも、この下に俺たちみたいに暮らしている人間がいるとして・・・温かく迎えてくれるかな?・・フローラを連れ帰った時、皆、一様に驚いて・・忌まわしき者と言って・・殺せとか騒いだよな・・・。」
急にアランが弱気になった。
キラもその時のことを思いだいた。
ここに住む人にとって、外から人が現れるなどという事は考えられない事に違いない。これだけの設備があれば、すでに、通路に侵入者があった事は、察知しているかもしれない。それが同じ人間などとは思いもしないだろう。目の前の扉を開いた瞬間に、殺されるかもしれない。キラもそう考えた。
「よし・・少し、ここで考えよう。」
「その方が良いでしょう。何か、別の方法で、中の様子を探れないか考えてみましょう。」
PCXも同意した。
「PCX、お前のセンサーで、中に人がいるかどうかわからないのか?」
アランが訊いた。
「先ほどから検知しようとしているのですが、ジオフロントの壁が遮蔽してしまって、全く分からないのです。ただ、中から何かの音声信号はキャッチできています。」
「じゃあ、人がいるって事か?」
アランが訊く。
「いいえ、そこまで判別できません。何かが動いているような音に近いようです。・・扉に耳を付けてみれば、聞き取れるかもしれません。」
PCXの言葉を聞いて、すぐにアランが扉に耳をつけた。アランには、ゴーンとかゴトンゴトンとか、とにかく何か低くて鈍い音が響いているようにしか聞こえなかった。
「他に、通路はないだろうか?ここは、外の扉の状態を見る限り、もう長年使っていないんだろう。他に、通路があるのかもしれない。探してみよう。」
キラが言った。
「そうか・・そこで人が出てくるのを待つのも良いかも知れない。」
キラも同意した。
「いえ・・他には通路はないでしょう。もともと、ジオフロントは正常な状態であれば、外界に出る事は必要としていません。キラ様たちのジオフロントも、食糧調達の為止む無く出入りしているのでしょう。だから、あれほど出入りしにくく造られているのです。」
「だが・・」とアランは食い下がった。
「それともう一つ。仮に、外に出るとしても、あの硫化水素ガスの湖があるのですよ。狩猟しようにも生き物など居ませんでした。それほどの危険を冒す必要はないはずです。地表に人が出てくることなどないと断言できます。」
PCXは、あっさりと可能性を否定した。

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