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9.侵入 [AC30第2部カルディアストーン]

「やはり、ここから中へ入るほかなさそうだな・・。」
キラが言う。
「ああ・・だが・・今日はもう疲れた。明日にしないか?」
チャンバーの中では時間が判らなかった。アランは随分疲れていた。
「それが良いでしょう。もう外は日暮れを過ぎています。お二人は休まれる時間です。」
PCXも同意した。
「そうだな。ここでゆっくり休もう。久しぶりに、虫に襲われる心配のない場所だ。」
その日は夕食も摂らず、そのまま横になった。ようやくジオフロントを発見できたことで、二人はすっかり安堵し、ゆっくりと眠る事が出来た。
「おはようございます。」
二人は、PCXの声で起こされた。
久しぶりにぐっすりと眠ったアランは、ぱっと飛び起きて、意気揚々と言った。
「よし!いよいよだな!」
「ああ・・そうだな・・・。」
キラは、余り乗り気がしないような返事をした。
「実は、お二人に、残念なお知らせをしなければなりません。」
アンドロイドのPCXは、何だか、人間臭い、もったいぶった言い方をする。
「お二人が眠っている間に、中を調べてきました。・・・中は、真っ暗でした。そして、人の生命反応はありませんでした。ここに住んでいる人間はないようです。」
「そんな・・ここまで来たのに・・ようやく見つかったんだ・・それなのに・・。」
アランは、落胆して言った。
「やはり、ここも、エナジーシステムが故障したのか・・。」
キラが言うとPCXが言った。
「それはわかりません。・・少なくとも、オーシャンフロントは何の問題もなく動いていますから、エナジーシステム自体は欠陥があるものとは言えません。他の原因かもしれません。」
「とにかく、中を調べてみるしかないな。入ってみよう、アラン。」
キラはそう言うと、扉を開けた。足元には、真っ暗な空間が広がっている。
「キラ、待て。これを使おう。」
アランは気を取り直して立ちあがると、肩に付けたカニオンのスイッチを入れた。そして、何かダイヤルを動かした。すると、カニオンの発射口から眩いほどの光が溢れた。
「キラも肩に着けて行けば良いだろう。」
アランはそう言うとリュックの中からカニオンを取り出してキラの肩に装着する。
二人は、カニオンの光で前方を照らしながら、長い階段を見乍ら、アラミーラでゆっくりと降りて行った。周囲には特に異常は見当たらなかった。下の通路まで降りると、床から1m程度の高さを保ったまま、ゆっくりと前に進む。PCXは二人よりやや高い位置を同じスピードで進む。物音一つしない、大きな真っ暗な空間だった。
目の前に、四角い形の影が見えた。近づくとそれはセルツリーだった。キラたちの暮らしている場所とほとんど同じだった。だが、人影はなかった。
「おーい!誰かいないか!返事をしてくれ!」
アランが苛立つように叫んだ。アランの声は、遠くまで響いて、小さなコダマとなった。だが、何の反応もなかった。
キラはアラミーラを降りて、セルツリーの階段を昇る。そして、セルの中に入ってみた。まったく使用した形跡がない。新品そのものだった。幾つか、同じように入ってみたが、どれも同じだった。ここには人が暮らした痕跡はない。
「もっと奥へ行こう。セルツリーは別の場所にもいくつかあるはずだ。」
再びアラミーラに乗り、中央の広い通路を進んだ。
「アラン、通路の左右に幾つもブロックがあるはずだ。手分けして見てみよう。」
キラはそう言うとスピードを上げて右手のブロックに飛び込んで行った。アランは左側のブロックへ向かう。二人とも、必死に人の暮らした形跡を探した。
PCXは、センサーに何の生命反応もないことは判っている。だが、二人のしている事を無意味な事だとは言わなかった。二人が納得するまで、じっと待つことにした。


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