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10.先人類の行方 [AC30第2部カルディアストーン]

ジオフロントに入ってから、3時間以上経っていた。二人はほとんどのブロックを探し、疲れ果てて、中央の通路に戻ってきた。
「だめだ・・何もない。」
アランはPCXの傍に座り込んだ。少し遅れてキラも戻ってきた。手に何か持っている。
「こんなものを見つけた。」
キラもPCXの傍に座り込むと、手にしていたものをアランに渡した。
「うわあ!」
受け取ったアランが驚いて放り投げた。それは、セルロイド製の人形だった。随分と古いものらしく、表面には小さなひび割れがあり、色も茶色くなってしまっている。投げ落ちたところで、手や足がバラバラになって砕けた。
「ここに人が居たのは確かだ。だが、相当、昔に違いない。彗星の破片が落下した当時の大昔のものかもしれない。」
キラの説明で、アランは改めて、人形を拾って見た。
「他には?」
「い・・いや・・・他と言っても・・・。」
キラは、アランの問いかけに少し答えるのを躊躇った。だが、意を決して言った。
「それが落ちていたところには、他にもたくさん・・いろんなものがあった。・・おそらく、昔の人の衣服とか言うのか・・たくさん固まって・・・そこには、人骨がたくさんあった。」
キラはそう言いながら、震えている。
「キラ様、大丈夫ですか?」
PCXが気遣うように言った。そして続けた。
「私も昨夜ここに入って調べました。この通路の奥に行くと、大きく崩れた場所がありました。ジオフロントの天井から壁にかけて亀裂が入っていました。地殻変動で壊れたのでしょう。そして、その壁は黄色く変色していました。火山性のガス、硫黄ガスが噴き出した痕でした。ここに避難していた人々は、一カ所に集まって、そのガスから身を守ろうとしたのでしょう。しかし、生き残る事はできなかった。大勢の人が、肩を寄せ合って亡くなったのでしょう。」
このジオフロントは地殻変動で機能を奪われ、中に避難していた数10万人の人々は命を落とした。地球上には数多くのジオフロントが作られたはずだったが、大陸の形が変わってしまうほどの地殻変動に耐えられなかったものも多かった。キラたちのジオフロントはまさに奇跡的に生き残ったと言えるものだった。
アランもキラも言葉が出なかった。
「キラ様、アラン様、ここの先人類は滅びてしまいましたが、幸い、コアブロックに被害はなさそうです。エナジーシステムはまだ生きているかもしれません。」
PCXは二人を励ますように言った。
「ここから、もう少し奥へ行ったところにコアブロックの入り口があるはずです。行ってみましょう。」
PCXは、床から浮かび上がり、二人を促した。
「そうだな・・目的はカルディアストーンなんだ。行こう。」
キラは立ち上がると、アランの手を取った。
「ああ・・。」
二人はPCXに先導されて、コアブロックの入り口を目指した。キラたちのジオフロントは、禁断のエリアのほぼ中央にコアブロックがあった。ここは、一番奥深い所にあった。PCXが話した通り、途中、天井と壁に大きな亀裂が入って大きく崩れていた。それを避けるようにして奥へ進む。
「止まって下さい!」
突然、PCXが空中に停まった。そして、赤く光る。これは、PCXが危険を察知した時に発する色だった。
「どうした?」
アランがPCXの隣に来た。
「その先を照らしてみてください。・・巨大な生命反応があります。・・動き始めました。・・ゆっくり動いています。」
アランが肩のカニオンの光で先を照らした。黒い帯状のものがゆっくりと動いているように見える。全体像は判らない。
「左の方にも反応があります。・・いいえ、目の前の黒いものと同じ、一つの生命体のようです。長い大きな帯の様な生命体です。30m程度の長さです。先端が徐々に近づいています。左です。頭です。」
PCXがそう説明するのと同時に、左の壁がガラガラと崩れてきた。
「ゴワーッ」

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