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17.新たなジオフロント [AC30第2部カルディアストーン]

PCXは、キラの休んでいる岩の窪みを出て、下降していった。
植物の繁るエリアまで行かなければ食糧もないだろう。千メートルほど下降すると、深い森が広がっていた。気温は30℃近くに上昇している。ここも直に灼熱の季節に包まれるに違いなかった。センサーを使って生命体を探す。小さな虫はたくさんいるが、とても食糧になるほどのものではない。しばらく、森の上を飛びながら探索を続ける。
突然、PCXが上空で停まった。センサーに生命体がキャッチされた。ドラコだった。ゆっくりと木々の間を進んでいる。獲物を狙っている様子ではなかった。
近づいてみると、アランが命を落とした時のドラコと同じほどの大きさだった。食糧にするには大きすぎるが、他に生命体が見つからなければ、仕留めるほかない。武器になるものは、PCX自身にある小さなレーザー光線しかない。頭部を撃ち抜くしか仕留める方法はなさそうだった。そのためには、ドラコが動きを止める瞬間をまつしかない。
PCXはしばらく、ドラコの後を追い、仕留めるチャンスをうかがっていた。
深い森の中をずんずんとドラコは進んでいく。すると、目の前に切り立った崖が現れた。そして、ドラコはその崖に開いた裂け目に入っていく。
「ここは・・ジオフロントのようだ。」
大きく口を開いていたのは、破壊されたジオフロントの様だった。開いた口の上部には、明らかに、ジオフロントの天井部分と判る加工が見える。地殻変動で、地面が大きく隆起したのだろう。ジオフロントの途中からぱっくりと割れた形となったものだった。ジオフロントの面影はほとんど判らないほどに植物に侵食されている。PCXがジオフロントの様子を探っているうちに、肝心のドラコを見失ってしまった。ただ、この中に入ったのは間違いない。おそらくことを巣にしているに違いなかった。
PCXは、ゆっくりとその空間に入っていく。日の当たらない奥の方には植物はなく、ジオフロントの壁や床がはっきりと判った。これほどまでに破壊されていれば、おそらく人類は生存していないに違いない。
慎重にPCXは奥へ向かう。床の色が赤く塗られている場所に辿り着いた。ここは、コアブロックだった。エナジーシステムのある部分は完全につぶれてしまっている。
センサーを使って、生命体の反応を探る。予想通り、人間の生命反応はない。PCXは潰れてしまったコアブロックの隣、ホスピタルブロックに入った。隣のコアブロックと比べ、ここはほとんど無傷に近かった。
床にドラコの姿を確認する。
「ここは巣のようだな。」
ドラコは、床に蜷局を巻いた状態で、静かに眠っている。仕留めるには絶好のチャンスだった。しかし、PCXは眠っているドラコの上を静かに通り過ぎる。そして、ホスピタルブロックの一番奥、薬品庫の中に入った。
薬品庫の中も、ほぼ無傷だった。PCXは、薬品庫の中央に停まると、薬品の入っている棚にセンサーを向け、棚にあるラベル情報を次々に収集し分析した。
「発見。」
PCXは宙に浮き、1か所の棚へ向かう。そこには、栄養剤が収められていた。小さな真空カプセルの中に、錠剤が詰まっている。PCXはライブファイバーを伸ばし、そのカプセルを包み込んだ。それから、別の棚に行くと、同じようにカプセルをいくつか包み込み、静かにホスピタルブロックを離れた。
外に出ると、外気温は50℃近くまで上昇していた。すぐにPCXはキラのいる場所へ戻った。
キラは身を横たえて休んでいた。
「キラ様、これをご覧ください。」
持ち帰った真空のカプセルをキラの前に差し出した。
「これは・・。」
「千メートルほど下に、地殻変動で大きく壊れたジオフロントを発見しました。しかし、エナジーシステムは完全に潰れていました。ホスピタルブロックは無傷でしたので、そこから、栄養剤や食料になりそうなものを持ち帰りました。」
「すごい・・こんなものが残っていたのか・・・それで、生存者はなかったのか?」
「残念ながら、その形跡はありませんでした。前のジオフロントと同じように、ドラコの巣になっていました。」
「そうか・・・。」
その日からしばらく、キラは、その場所に留まり養生した。PCXが持ち帰った栄養剤の効果は大きく、翌日にはすぐに動けるようになり、3日ほどで体力を回復した。

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