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18.古人の建造物 [AC30第2部カルディアストーン]

「目の前の山を越えるのは無理です。遠回りになりますが、低い地帯を通るルートのほうが、体への負担が少なく、スピードも上がります。」
キラはPCXの誘導に従った。
高度を千メートル程度ほど下げて飛んでいく。外気温は30℃を超えているが、酸素が濃いために体への負担は少なかった。1週間ほど、2千メートルほどの高さを維持して飛んでいく。大きな樹木は少なく、背の低い木や草が広がる穏やかな地帯だった。
徐々に気温が下がり始め、PCXはさらに高度の低い地帯を進んだ。高い樹木の森が広がる地帯に入った。
「ここらからは、虫の攻撃に注意しなければなりません。」
できるだけ木々の上空の高いところを飛んでいく。
「PCX、あそこに何か見える。」
キラは前方の森の中に、突き出したような恰好の人工物を発見した。ジオフロントとは形状が違う。
「寄ってみましょう。」
PCXが進行方向を変えた。近づいてみると、その人工物はかなり大きかった。少し傾いているが、空を突き刺すように真っ直ぐに伸びている。塔の様だった。キラは初めて目にするものだった。
「北緯35度・東経137度あたりです。」
キラは塔の先端辺りに近づいてみると、少し下の方に建物のようなものがあるのを発見して、入ってみた。中はがらんどうになっている。傾いているが、何とか歩ける。円形のフロアだった。
「遥か昔の建造物のようですね。1000年ほどでしょう。」
PCXが柱に刻まれた文字を読みながら解説する。
「こんな山の中に、これほどの建造物が?」
キラは、フロアを歩きながら訊いた。
「いえ、ここは、東京と呼ばれた大きな都市があり、海の近くだったようです。この塔はスカイツリーでしょう。記録によると、彗星の破片が衝突した時、大津波で地上のほとんどの建造物は破壊されたはずですが、おそらく、この塔は破壊を免れたのでしょう。かなり頑丈な構造のようです。それにしても、地殻変動で大きく地面が隆起したはずですが、よく無事に立っていられたものです。」
キラは古の人類が英知を尽くして建てた、巨大な構造物を目の当たりにして、感動していた。
「かつては、地表で人類が暮らせたんだね。・・・それにしても巨大な構造部だ・・・。こんなものがたくさん地表に建っていたんだろうか?」
「これはまだ小さいもののようです。高さが634mほどだったようですから。この後、1000mを超える巨大な建物が世界中にたくさん作られたはずです。」
「今まで飛んできたところには、こんな人工物はなかったが・・・。」
「記録によると、大津波で破壊された後、さらに地殻変動が起きました。人類が暮らしていた海沿いの都市のほとんどは海中に沈んだようです。ここは逆に隆起した数少ない地域なのでしょう。」
「では、この周辺には同じような建造物や人工物があるのかい?」
「深い森の底に沈んでいるかもしれませんが、この周辺にはきっとあるでしょう。しかし、700年以上前の建造物ばかりです。」
「そうか・・・。」
キラは塔の窓枠から外の景色を眺めながら、PCXの言葉を聞いていた。
遥か昔、ここには人類が繁栄していた証がある。
地中深くでしか生きられない現在とは違い、太陽の光を浴び、笑顔で暮らす人類に思いを馳せた。
キラはそこで一夜を過ごした。
「ここからは北西を目指します。火山地帯の北側を通る地帯を2千キロほど進めば到着します。」
アラミーラは最高時速30Km出る。ジオフロント出発した当初は、キラもアランも体力がありかなりの速度で1日8時間近く飛べた。しかし、今は重い荷物を背負ったうえに体力も落ちている。時速20㎞程度で1日5時間程度が限界だった。残りの距離を考えると、まだ20日以上は掛かる計算になるのだった。
しかし、一刻も早く戻らなければならない。灼熱の季節の熱波が北上を続けている。休んでいる間はなかった。
PCXは、キラの体力を観察しながら、できるだけ短い経路を探しながら、誘導していく。


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