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23.真っすぐに [AC30第2部カルディアストーン]

「ここからはとにかく北西へ真っ直ぐ向かいます。」
PCXが先導しながら、しばらくは、快調に進んで行けた。
火山地帯を超えると、比較的平坦で、穏やかな緑の森が延々と続いている。二日ほどは順調に進んでいった。
南から熱波が近づいているためか、日中の気温はかなり上昇し、40℃を超えていた。
「少し高度を上げましょう。」
「ああ・・そうしよう。」
快適な温度には1000m以上の上空を飛ばなければならなかった。できるだけ高い位置をキープして飛ぼうとしたが、上空にはジェット気流のような強い向い風が吹き、スピードが上がらない。ぎりぎりの高さを選んで飛ぶしかなかった。
「右手に海が見えれば、ジオフロントはもうすぐです。」
PCXは、キラを励ますように声を掛ける。気温の上昇でキラは随分と体力を奪われていて、気持ちとは裏腹にアラミーラのスピードは徐々に落ちていく。
PCXは、キラの体力を考え、日中の高温時間帯はかなり高度を上げ、朝夕の少し涼しい時間帯には、風の弱い低いエリアを選んで飛んだ。
4日目には、ついに、海岸線を視界にとらえる事が出来た。ようやく、出発した地点に戻れたように感じ、キラは少し気力を持ち直すことができた。
「PCX、あとどれくらいなんだ?」
キラは、海岸線を視界にとらえた時、PCXに訊ねた。
「あと1日で到着できます。」
「そうか・・いよいよだな。」
「はい。」
その会話の後、キラは少しスピードを上げた。体力は限界に近づいているはずだったが、一刻も早くジオフロントに着きたいという一心で、スピードが上がったのだった。
一夜を浜辺で過ごして、いよいよ、ジオフロントに向かう最終日になった。
キラは前夜、興奮してなかなか寝付けなかった。
「皆、元気に暮らしているだろうか?」
PCXが作ったシェルターの中で、横になったキラは独り言のように呟いた。
「きっと、キラ様の帰りを待ちわびておいででしょう。」
「ライフエリアのエナジーシステムは無事に動いているだろうか?・・PCX,何か判る方法はないかい?」
「まだ、この距離ではそこまでは判りません。先ほどから、ライフエリアのコンピューターに、通信は試みているんですが・・反応はありません。おそらく、電波が届かないんでしょう。」
「そうか・・・。」
「さあ、もうお休みください。明日、もう1日、飛ばねばなりません。かなり高温ですから、夜明けとともに出発しましょう。」
「ああ・・そうしよう・・。」
キラは目を閉じた。
既に外気は40℃を超えている。日没後もほとんど気温が下がらない。PCXのシェルターがなければ、体を休める事も出来ないほどであった。
明け方、空が少し白み始めた頃、PCXはキラを起こした。
「さあ、行きましょう。」
PCXがシェルターを解除すると、いきなり熱風がキラの体を包み込んだ。
「予想以上に熱波が近づいています。現在の気温は45℃です。すぐに上空へ逃げましょう。」
キラは荷物を背負うと、アラミーラで一気に上昇する。1000m上昇しても、まだ40℃近くの気温だった。東の空からはっきりとした太陽の光が差し込み始めた。ふと、南の方に視線を遣ると、既に空高くまで積乱雲が到達している。その下は真っ暗だった。
「あの雲の下はおそらく豪雨と暴風のはずです。巻き込まれたら、まともには飛べません。急ぎましょう。」
「ああ・・・」
とにかく、一刻も早くジオフロントに到達しなければならない。キラは最後の体力を振り絞って、アラミーラの速度を上げた。

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