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25.ジオフロントの異変 [AC30第2部カルディアストーン]

扉を開け、静かに、ジオフロントへ入った。幾つもあるチャンバーを一つずつ降りていく。皆の笑顔が少しずつ近づいてくる実感があった。最後のチャンバーを抜けると、あの長い長い階段が見えた。足元にぼんやりと明かりを感じる事が出来る。キラは、階段をゆっくりとアラミーラで下っていく。
キラは、途中の踊り場で一度停まった。
「やはり何か変だ。」
そして、足元の階段をじっくりと見る。何か、出発した時と比べて、あちこちに小さな傷がたくさんついているように感じた。この階段は、猟に出る男たちが通る程度で、さほど痛むものではないはずだった。しかし、たくさんの人が一度に通ったような跡が見られた。
「ただ今、戻りました。」
キラは、ライフエリアの入り口で、響き渡るようなはっきりした声で挨拶した。
夕食を摂る時間で、コムブロックにはたくさんの人でにぎわっているはずだった。しかし、キラの声は壁に反射ししばらく残響した後、迎えるべき声が返ってこなかった。
キラは、チャンバーの扉の前で感じた違和感を思い出していた。何か異変が起きたのは間違いない。急に胸騒ぎがした。
キラは、フードブロックを覗いた。しかし、そこには人影はない。続いて、ホスピタルブロックも覗いた。そこにはガウラが待っているはずだった。だが、姿はなかった。
「皆、どうしたんだ・・・。」
ジオフロントには誰一人居ない。
「PCX!ここは本当にあのジオフロントなのか?」
キラは混乱し、ここがジオフロント73とは思えなかった。
「間違いありません。」
「皆はどうしたんだ?死んでしまった・・と・・。ライフエリアのエナジーシステムが異常を起こしたのか?」
「いいえ・・私がアナライズした範囲では、ずっと正常に動いているようです。」
「じゃあ・・一体、何が起きたというんだ!」
キラは、PCXに問い詰めながらも、まだ、ライフエリアのあちこちを走り回って、どこかに潜んでいないかと探し回っていた。PCXは、センサーを使ってジオフロント内を探っている。
「キラ様、禁断のエリアに生命反応があります。」
すぐにキラは、ライフツリーの階段を駆け上がり、禁断のエリアへ通じる通路へ急いだ。暗闇の通路を一目散に走り抜けるとドアを開けた。
「PCX、灯りを!」
PCXが灯りを照らす。禁断のエリアに降りる階段の下に、身を寄せるように数人が座り込んでいた。光りに照らされると、座り込んだ人たちが、暗闇へ逃げようとする。
「待ってくれ!僕だ!キラだ!戻ってきたんだよ!」
その声を聞いて、座り込んでいる集団がキラの方を見た。光りが当たると眩いのか、皆、顔面を手で隠しながら、キラの方を見ている。
「本当に・・キラ・・なのか?」
その声は、キラの母ネキだった。他には、プリムの母など、年老いた女性たちの様だった。
「母様・・・いったい何が・・」
キラがそう言って近づこうとすると、皆、一斉に身構え、プリムの母がグラディウスをキラに向けて言った。
「それ以上、近づくんじゃない!本当のキラか、どうか、わかったもんじゃない!」
その様子を見て、PCXが訊いた。
「どうしたんです!」
すると、女性たちは悲鳴のような声を上げた。
「やっぱり、お前たち、キラじゃないね!さあ、どうしようっていうつもりだい。こんな婆さんを殺したところでなんてことはないだろ!」
プリムの母は気丈な女性だった。すっくと立ち上がると、両手でグラディウスを構え、キラとPCXを前に高く構えを見せる。
「いったい、どうしたんです。僕はキラです。たった今、長旅から戻ったところなんです。でも、ライフエリアにはだれ一人居ない。探しまわって、ようやくみなさんの居場所を突き止めたんですよ。一体、何があったんです。みんなはどうしたんです?」

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