SSブログ

12.アラン異変 [AC30第2部カルディアストーン]

キラとPCXは、半球形の装置の周りを丹念に見て回った。一回りしても、装置にはドアらしきものは見当たらなかった。何としても、この装置を開け、格納されているエナジーシステムから、カルディアストーンを取り出さなければならない。装置の上部はPCXが浮遊しながら点検する。
「見えている範囲にはドアはありません。埋まっている下半分にあると考えられます。」
PCXが言う。それを聞いて、キラは装置の周辺の床を探る。地下へ通じるドアを見つけなければならない。しかし、それらしいものはどこにもなかった。どれほど時間が経ったのだろうか。キラは夢中で探し回るうちに疲れ果ててしまい、床に座り込んだ。
「少し休みましょう。アラン様の様子も気掛かりですから、一度、戻りましょう。」
PCXが言い、キラも一旦コアブロックを出た。ドラコの死骸を越えて、先ほどの居た場所に戻ってみると、アランは横になっている。まだ、体が痺れて動けないのか、心配になって近づいてみると、アランの様子はおかしかった。
「アラン、大丈夫か?」
キラが声を掛けても、アランは返答をしない。
「おい、アラン!」
体を揺すると、少しだけアランが目を開けた。
「どうしたんだ?アラン。」
キラの呼びかけに、アランがゆっくりと手を伸ばす。肩に着けたカニオンの灯りに照らされたアランの手が、黒く変色して、指先は崩れていた。
「アラン様は、ドラコの毒でやられています。頭部を打ち抜いた時、体液が飛び散ったのを浴びてしまったのでしょう。痺れて動けなかったのも、おそらくその為かと・・・残念です。」
「大丈夫だ!近くに、ホスピタルブロックがあるはずだ。解毒剤がある。待ってろ、アラン。すぐに取ってくる。」
キラは、すぐにアラミーラに乗り、ホスピタルブロックを探す。グランドジオではコアブロックに隣接して巨大なホスピタルブロックがあった。そこから、プリムのために解毒剤を取ってきた。
コアブロックの奥、ホスピタルブロックのマークのあるドアを見つけた。
「あった!」
キラはアラミーラから飛び降りると、真っ直ぐにドアに向かう。急いでドアを開いて、中に飛び込んだ。肩のカニオンの光を最大にして、室内を照らす。
「なんてことだ・・・。」
キラは膝を折り、座り込んでしまった。
ホスピタルブロックのドアを開けたところから先には、おびただしい数の古い衣服が山のように積み上がっている。地殻変動で吹き出した硫黄ガスから逃れるため、先人類たちは争うように、ホスピタルブロックへ逃げ込み、ここで命を落としたのだ。肉や骨は長い年月の間に朽ち果て、衣服だけがそこに残された状態だった。薬品庫はホスピタルブロックの奥にあったはずだった。だが、そこまでたどり着けないほどに多くの骸があった。天井近くまであるカプセルベッドにも同じように山ほどの衣服がある。どれほどの人がここに逃げ込んだのだろうか。
それでも、キラは諦めるわけにはいかなかった。衣服の・・いや骸の上を歩き、薬品庫へ向かう。広いホスピタルブロックの奥、とにかく、一刻も早く薬を取りにいかなければならない。
ようやく、その場所近くに辿りついて、再び、キラは落胆した。薬品庫のドアは大きく開かれていた。そして、その中は無残にも大きく亀裂が入り、岩石が詰まってしまっていた。そして、その一部は黄色く変色していた。ここから硫黄ガスが噴き出したに違いなかった。どこにも薬の欠片さえも見当たらない。
もはや為す術なく、キラはアランの許へ戻るほかなかった。
「キラ様、間に合いませんでした。アラン様は、先ほど、心停止となりました。」
PCXはキラに言う。
「薬はなかった・・・ホスピタルブロックも破壊されていたんだ・・・。」
キラは悲痛な表情で言う。アランはすでに冷たくなっている。
「アラン、すまない・・。」
キラはそう言って、アランの手を取ろうとした。しかし、ドラコの毒のせいで、どろどろに溶けはじめ、掴むことができなかった。そのうちに、アランの体が形を失い、液体になり、水溜りのようになった後、床を流れていく。
ライブスーツは主を失い、シュルシュルと小さくなり、四角い箱に戻る。アランの体の有った場所には、小さなペンダントが転がっていた。

nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0