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13.勇者復活 [AC30第2部カルディアストーン]

キラはアランを目の前で失い、号泣した。
幼いころからともに過ごし、兄弟以上に親密な関係だった。禁断のエリアに足を踏み入れなければ、クライブント導師の秘密を暴かなければと、自らが引き起こした事の重さを今になって後悔した。
もはやすべての希望を失ったようで、キラは、アランの遺品となったペンダントを握りしめ、ただただ号泣するばかりだった。PCX自身には、悲しみという感情はなかった。だが、キラの姿を見て、アランを失って気力を失くしている状態は理解できた。
随分と長い時間、キラはそこを動かなかった。泣き疲れ、眠り、目覚めると再び涙し、数日を過ごしたようだった。キラはげっそりと痩せ、自らも動けないほどに体力を失っていた。PCXは、余りのキラの様子についに動き出した。
目の前のドラコの肉を切り取り、調理し、食事を用意した。そして、ジオフロントの中を探し回り、どこからか栄養剤を持って来た。
「キラ様、このままでは命を落とします。食べてください。」
しかし、キラは手を伸ばそうとしない。
「あなたが死んでどうするのですか!ジオフロントの皆さんや、フローラ様もすべて命を落とすことになります。アラン様も、このままでは、命を無駄にしただけです。さあ、立ちあがって下さい。あなたは勇者なのです。」
「勇者」という言葉は久しぶりに聞いた。確かに、ジオフロントを旅立つ時、キラもアランも、ジオフロントを救うため、命をかける覚悟を持っていた。それが「勇者」であると心を決めていた。
PCXの言葉に、精気を失っていたキラの目に微かに光が戻った。
アランのためにも、何としても、カルディアストーンを持ち帰らなければならない。
キラはついに立ちあがり、PCXが用意した食事を、ただ無心に食べた。ただ、命を繋ぐために食べた。それから、キラは深く眠った。
再び、目を覚ましたキラは、すぐに、コアブロックに向かった。そして、半球形の装置の前に立った。
「PCX,どこかにコントロールルームがあるはずだ。それを見つけよう。きっと、そこにシステムへの通路がある。」
キラはアラミーラに乗り、コムブロックの中を探す。PCXも探した。
コムブロックの中は、中央に半球体の装置があり、周囲の壁も同様に球体をしていた。入口から反対部分に、装置の5分の1ほどの小さな半球体の部屋があった。ドアは赤く塗られており、入室禁止のような、大きな×のマークがついていた。
「これだ!」
キラはドアノブに手をかけた。しかし固くロックがかかった状態だった。腰につけたスクロぺラムを取り出し、ノブを撃つ。あっけなく壊れ、ドアは開いた。小さな空間だった。予想通り、様々な計器類が壁に埋め込まれていて、すぐにコントロールルームと判った。
「キラ様、少し時間を下さい。エナジーシステムの状態を解析します。」
すぐに、PCXは、計器類を一渡り見て、いくつかの計器のジャック部分にライブファイバーを変形させて差し込んだ。PCXは、内部の状態を細かく読み取ろうとした。もし、エナジーシステムが少しでも動いているようなら、容器の中に入るのは危険だからだった。
「どうだ?」
キラの問いにPCXは少し曖昧な返事をする。
「稼働はしていたようですが、今は完全に停止しているようです。停止した原因は・・判りません。」
それを聞いて、キラが言った。
「よし、通路を探そう。どこかにシステムへの通路があるはずだ。」
壁は一面計器類で埋められていて、通路のようなドアはない。中央の椅子は一つ。
「どこだ?」
キラはそう言って、その椅子に座った。ガクンと椅子が揺れる。ふと足元を見ると、小さな取手が付いている。
「これだ!」
キラは椅子を回し、取手を引く。すると、椅子がゆっくりと沈んでいく。キラは慌てて、椅子に座るとそのままゆっくりと椅子は下がり、停止すると目の前に大きな通路が開いていた。まっすぐ続く通路。キラは逸る思いを押えつつ、ライトで行く先を照らしながら進んでいく。大きな空間に出た。そこはエナジーシステムの心臓部だった。球体の中心部分。壁にはキラキラと光るパネルが張り巡らされている。その真ん中を斜めに傾いた状態の太い心棒のようなものが貫いていて、ちょうど中央部分に球体の容器があった。

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