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28.コアブロック [AC30第2部カルディアストーン]

ガウラは、キラのカバンの中に入っていた栄養剤を打ち、コアブロックの隣室にある薬品庫のベッドに寝かされている。
エリックが、この間の経緯を説明した。
「ガウラ様は、薬を取りに来られたんですが・・ライフエリアに戻ろうとした時、ユービックを通じて、あの襲撃を知ったのです。」
エリックが話し始めた。
「ガウラ様は、異変を知りすぐに戻ろうとされたのですが、男たちが為す術なく次々に命を落としているさまを見て、私がここに留まるように説得しました。それに、あの光景を見てしまえば、恐怖で動けなくなっているのも事実でした。以来、ずっとここに隠れておられました。」
「2か月近くの間ここに居たのか?」
「はい、最初は非常食でしのぎましたが、すぐに底をつき、薬品庫の中の栄養剤で何とか命をつないできたのです。」
「何度か、ライフエリアの様子を知ろうとされましたが、ユービックで見たあの襲撃の様子が余りにも惨いものだったために、ここから出る勇気は持てなかったのでしょう。精神的にも、ジオフロントの人たちを見捨て、自分だけが生き延びた罪の意識を持たれてしまったようでした。」
「そ・・そんなにも惨い様子だったのか・・・」
ガウラは元来、気丈な女性だ。そのガウラが恐れるほどの惨劇が繰り広げられ、罪の意識に苛まれたことを改めて知り、驚いた表情でキラは、静かに眠っているガウラの顔を見つめた。
すっかりと痩せた様子が痛ましかった。
「ええ・・・あの者たちの力は凄まじいものでした。怪しい光を放つと、人はもがき苦しみ、血を吐き、ゆっくりと体が溶けていき、最後には灰のようになるのです。」
「怪しい光?」
キラが訊く。
「ええ・・熱線のようなものではないようでした。PCXの体がぼんやりと光っているようで、その光はPCXの周囲1mほどだけに見えました。そして、その光に触れると、急に苦しみだすのです。」
「何か対抗できる方法はなかったのか?」
「男たちがグラディウスで反撃していましたが、グラディウスを突き立てたところで傷一つつける事はできませんでした。結局、皆、その光に触れてしまうのです。」
「だが、亡骸はどこにも・・灰の痕跡さえなかった。」
「PCXたちは、灰を吸引し、何もなかったかのように綺麗にしてしまいました。」
母たちもその光景を見たのだろう。そう思うと、キラは胸が痛んだ。
グラディウスで一突きされ絶命する方がどれほど楽だろう。苦しみや痛みを感じながら悶え、そして徐々に体が溶けるなど・・そう想像した時、アランを思い出した。
キラはガウラの顔を見つめたまま、もう言葉が出なかった。
「キラ様、お戻りになられたという事は・・カルディアストーンを手に入れる事が出来たという事ですか?」
落胆し沈黙しているキラにエリックが訊く。
「ああ・・」
キラはそう答えたものの、今のジオフロントの様子を見て、その事にどれだけの価値があるかと半ば投げやりな言い方をした。PCXが付け加えた。
「ここから5000kmほど南東に、ジオフロントを見つけました。地殻変動で大きく破損し、すでに人類は死滅していましたが、奇跡的にエナジーブロックは無事でした。そこから、カルディアストーンを持ち帰る事が出来たのです。」
「それは・・素晴らしい・・・ジオフロントが昔のように蘇るのですね。」
「そうです。そうすれば、また、豊かな暮らしが迎えられるのです。」
PCXとエリックは、そう会話している。しかし、キラの心は沈んだままだった。
「ああ・・だが・・アランが命を落とした。巨大なドラコに襲われた。それに、ここが復活したところで、もはやここに居るのはわずかな者だけじゃないか・・きっと、フローラやハンクたちももはや殺されているに違いない。ここに、どんな未来があるんだ!」
キラは苛立って言い放つ。
「諦めちゃダメ!」
ベッドに横たわっていたガウラが目を覚ましていた。

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