SSブログ

30.キラの迷い [AC30第2部カルディアストーン]

沈黙を破ったのは、PCXだった。
「キラ様・・。」
PCXはガウラが自分を恐れている事を察知して、遠くからキラに声を掛けた。フィリクスの実を一つ抱えている。キラはすぐに気付いて、ガウラのベッドから離れて、PCXから、フィリクスの実を受け取るとすぐにガウラの許へ戻った。
「さあ、これを食べれば、元気になる。」
キラはそう言うと、フィリクスの実を二つに割り、差し出した。ガウラはゆっくりと身を起こし、フィリクスの実を受け取ると静かに口に運んだ。暫く、その様子を見つめたあと、キラが言った。
「もう少し横になって休んだ方が良い。ひと眠りすれば、元気に目が覚めるさ。」
ガウラはキラに言われるまま、横になり目を閉じる。随分と落ち着いた様子だった。
キラは静かにガウラのベッドから離れ、PCXとともに、コアブロックへ向かった。
コアブロックの奥にあるモニターがたくさん並んだラボで、エリックがカルディアストーンの分析をしていた。
「もう少し時間が掛かります。」
エリックが、キラたちに気付いてそう言った。

キラは、コアブロックの隅にある椅子に座ると、少し考えてから、PCXに訊いた。
「一体、オーシャンフロントでは何が起きているんだ?どうして、PCXが・・いや・・オーシャンフロントからPCX達が来て、ここを襲ったんだ?」
「わかりません。私たちPCXは、人間を傷つける事などできないよう、プログラムされているのです。」
「誰かが、そのプログラムを解除したということかな?・・。」
「それは無理です。禁止プログラムと稼働プログラムは一つのプログラムですから、解除すれば、機能が停止します。」
「だが・・・ここで男たちが命を奪われているのは事実だ。」
PCXは、キラの言葉に返答できなくなってしまった。
「ここに流れ着いたのは、オーシャンフロントの火災と暴動だと言ってたよな?」
キラが確認するように言った。
「はい。」
「じゃあ、その後、オーシャンフロントがどうなったか判らないんだな。」
「はい。」
「暴動の後、狂った統治者でも現れたのだろうか?」
「わかりません。ですが、私たちアンドロイド・ガーディアンのプログラムを書き換える事は、想像を超えるほどの高度な技術力がなければできません。暴動を起こしたミドルエリアやそれ以下のエリアには、そういう教育はされていませんでした。」
それを聞いて、キラがはっと思いついた。
「君たち、アンドロイド自身という事はないだろうか?」
「理由がありません。」
「いや・・主人の命を守るために、暴動を鎮める必要があった。それには、人間を傷つけないというプログラムが邪魔になる。そのことに気付いたんじゃないか。プログラムを解除し機能停止となったとしても、その前に、再起動プログラムをセットしておけばと考えたのじゃないだろうか?君たち、アンドロイド・ガーディアンは僕たち人間以上に高い頭脳を持っているんだ。それくらい容易な事なんじゃないか?」
「理論的には成立しますが、その必要があったのでしょうか?それに、暴動を抑えるのが目的であれば、なぜ、ジオフロントを襲う必要があるでしょう。」
PCXの答えも正当のように思えた。
「いずれにしても、一刻も早く、ハンクたちを連れ戻さなければならない・・・。ジオフロントが復活しても意味が無くなってしまう。」
「オーシャンフロントへ行きましょう。私が案内します。」
「しかし・・・。」
キラは、言葉に詰まった。目の前に居るPCXがどこまで信用できるのか、ガウラの言葉を思い出していた。


nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0