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3‐13 タワーの秘密 [AC30 第3部オーシャンフロント]

キラは再び、あの「白い部屋」に連れ戻された。
創造主の部屋から出た時、黄色い円盤状のものから飛び降りようと試みたが、どうにも身動きが取れなかった。見えない糸で体を縛り付けられているようだった。そして、そのまま、部屋に連れ戻されたのだった。
部屋に戻った時、ステラの姿はなかった。
「何としても、プリムたちの居場所を突き止めないと・・・だが、どうすれば良い?」
ソファーに座り、外の景色を眺めながら考えていると、ステラが現れた。
「主との対面はいかがでしたか?」
ステラの声は少し高揚している。主と対面する事はステラにとっては特別な事に違いない。
「このオーシャンフロントの創造主だと・・・700年の時を超えて生き続けているとも・・・。」
ステラは驚かなかった。
「命は永遠です。特別な力をお持ちなのです。あなたにもお分かりになったでしょう?」
「君も、何百年も生きているのか?」
「いいえ。今年で20歳だと聞いています。主以外に永遠の命を持つ者はいません。」
キラは質問を変えた。
「さっき、部屋を出たところに大きな中空がありました。あれは、ずっと下まで続いているのか?」
外に出たこともないだろうから、判るはずもないと思いつつ質問してみた。
「では、タワーの全体図をお見せしましょう。」
ステラから意外な答えが返ってきた。
そして、ソファーの前の床が開き、ユービックのような小さな機械が現れ、キラの目の前に、タワーの3D映像が映し出された。
「最上部が創造主のお部屋です。そこから10層までは、パトリ・エリアです。私たちのような者が暮らしています。その下は、プレブ・フロア、ノビレス・フロアと続きます。中空部分を通じて、清浄な空気が注ぎ込まれ、タワー全体が快適に保たれています。オーシャンフロントをコントロールするために必要なものが地中深くまで設えられているのです。このすべてを主がお作りになられたのです。」
目の前の3D映像はノビレスフロアまでは鮮明に映し出しているが、それより下は黒く塗られていて、シークレットになっているようだった。
プリムたちがいるとすれば、おそらく最下部のエリアだろうと想像がついた。
「オーシャンフロント全体がどうなっているかは判りませんか?」
キラが尋ねると同時に、目の前にオーシャンフロントの全体像が映し出された。
オーシャンフロントは、大きなピラミッド状の山、そしてその中腹にタワー、南側にいくつかの円柱状の建物、更に平地部分は田園が広がっている。到着した時に見た風景そのままだった。水面より下の部分は、黒く塗りつぶされ構造は判らなかった。
「タワーの下にある、あの円柱状の建物はなんですか?」
「あれは、ドロスたちの住居です。」
「ドロス?」
「タワーに住めるものは、主から選ばれ、パトリ、プレブ、ノビレスに分けられ、住む場所が与えられます。選ばれなかった者は、ドロスとして、あの住居で生きる事になります。」
「どういう基準で選ばれるのですか?」
「主の御考えは判りません。命を得た時にすでに分けられているのです。」
「では・・・母と暮らすことは?」
「母?・・・それは何でしょう?ここにはそう言う言葉はありません。」
「あなたを産んだ人です。」
「ここに生きるすべての人間、いえ、植物も動物も全て、創造主から命をいただきました。私を産んだのは創造主です。」
キラは、創造主を名乗るあの女性の、途轍もなく大きな力を恐れた。そして、命を作り指すとはどういう事か、永遠の命の関係があるのか、その秘密を知りたくなった。


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