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3‐3 危険な生物 [AC30 第3部オーシャンフロント]

翌日も朝から北東を目指して進んだ。昼ごろに、小さな島影が目に入ってきた。
「この先に、大きな陸地があります。いくつも湾もあるようですから、きっとこのあたりにいるはずです。」
PCXはレーダーを使ってオーシャンフロントを探しているようだった。キラも目を見開いて探した。
「少し上空から様子を探ってみましょう。キラ様は、この先の湾の中を探してみてください。」
PCXはそう言うと急上昇していった。

キラは、PCXの示した、目の前に見える湾の中に入っていった。
切り立った崖がぐるりと壁のように取り囲む深い湾、中には大小の島がいくつも並んでいる。海流は穏やかに見えた。崖の上や島々には、大きな針葉樹が立っている。
ジオフロントを出て、初めて、森が広がる大地を目にしていた。
森は広がっているが、生物はいないように、静まり返っていた。ジオフロントの地表には、数多くの危険な虫たちがいて、羽音や歩く音、戦う時の激しくぶつかり合う音、様々な音が響いていて、キラはその音を聞き分ける能力も高かった。
しかし、ここでは、そういう音が全く聞こえなかった。
おそらく、長い厳冬の季節には、深い雪と氷に閉ざされるからだろう。
地上の生物は、長い冬を生き抜くことができないのだろうと、キラは考えていた。

アラミーラで、島々の間を縫うように飛び、オーシャンフロントが隠れていないか探して回った。

油断をしていた。一つの島をぐるりと回った時だった。
海面から、急に黒い影が飛び出してきた。目の前が真っ白になる。キラは、アラミーラごと吹き飛ばされ、高くそびえる針葉樹に打ち付けられた。激しい衝撃にキラは気を失い、針葉樹の枝に体を打ち付けながら落下した。

上空でオーシャンフロントを探していたPCXは、海面に浮かんでいるアラミーラを発見して、キラの異変に気付いた。すぐに、生命体センサーを使って、島の中腹に倒れているキラを発見した。

キラは、PCXのライブカプセルの中で目を覚ました。ライブカプセルの中には高濃度の酸素が充満され、キラの回復を助けた。
「気づきましたか?」
キラは体を起こそうとしたが、全身に痛みが走って動けなかった。
「かなり強い衝撃を受けたようですね。幸い骨折はしていませんが、痛みはしばらく残るでしょう。」
キラは、針葉樹に衝突し、そのあと、枝に全身を打ち付けたものの、落下したところが、深い苔の絨毯の上だったことが幸いして、骨折を免れていた。
「一体、何があったのですか?」
キラは少しずつ思い出していた。
「海面近くを飛んでいて、いきなり、水柱が立ったんだ。その勢いで跳ね飛ばされてしまったようだ。」
「きっと、それはグル―でしょう。」
「グル―?」
「オーシャンフロントでは、最も危険な生物と恐れていました。体長10メートルほどで、物凄いスピードで水中を泳ぎます。深く鋭い棘をもった足が10本ほどあり、あらゆる生物を餌にします。水中の魚や貝だけでなく、空を飛ぶ虫さえ餌にします。水中から目にもとまらぬ速さで棘のある足を突出し捕えるのです。直撃していたらひとたまりもなかったでしょう。」
「運が良かったということか・・・」
「いえ、アラミーラのおかげです。新型のアラミーラには、近づく危険を察知してとっさに避けることができる機能がついています。避けるために、急上昇し、キラ様がバランスを崩してしまい振り落とされたのでしょう。」
キラはPCXの話を聞いているうちに、全身から痛みが引いて、ずいぶんと楽になった。
「高濃度酸素の中に、鎮痛剤を少し混ぜています。楽になられたのなら、早めにここを出ましょう。グル―が現れたのなら、この周囲にオーシャンフロントはいないでしょう。別の湾に隠れているはずです。」
二人はすぐに、島を離れた。

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