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3‐4 悪天候 [AC30 第3部オーシャンフロント]

「上空から調べたところ、もう少し西方にも同じような湾がありました。日暮れまでは、そこへ着けるように急ぎましょう。」
PCXはそう言うと少しスピードを上げた。

前方に別の陸地が見えた。同時に、陸地を覆うような黒い雲が広がっているのが目に入ってきた。
「天候が心配です。」
PCXがそういうと同時に、ぽつぽつと雨が降り始める。
目の前の黒い雲があっという間に二人のところまで到達した。叩きつけるような激しい雨、渦を巻くような強風、さらに、激しい稲光が轟音と共に打ち始めた。
もう安定的に、飛んでいける状態ではなかった。目を開けていることもままならない。それに、いつ、稲妻に打たれるかもわからない状態になってしまった。

しかし、目指す陸地までは、まだ距離があった。
「もうこれ以上は無理です。ライブカプセルで海面に降りましょう。」
PCXはキラを包みこみ、海面に降りた。海面は強風に激しく波打っている。
カプセルは激しく波に翻弄されるが、なす術もない。PCXは、ライブカプセルの中のキラの体を完全に包みこみ、空間をなくし、可能な限り小さく縮小し波の影響を避けた。
外は昼間にもかかわらず、薄暗く、ただじっと黒雲が去るのを待つ他なかった。
夕暮れの時間を迎えても、一向に嵐は過ぎなかった。
夜になっても、激しい風雨は続く。
「キラ様、大丈夫ですか?」
時折、PCXはキラの様子を伺う。キラはじっと耐えていたが、昼間の衝撃で意識を失うように深い眠りについた。

朝を迎える時間だった。だが、朝日は射してこない。
黒雲は去っていなかった。雷や強風は収まったようだが、強い雨は降り続いている。波は収まった。
目を覚ましたキラは、「フォルティア、外の様子は?」と訊いた。
「お目覚めですか?・・外は強い雨が降り続いています。」
PCXの声の向こうから、地響きのような、振動のような音を感じた。
「あの音は?」
「近くの火山が噴火しているようです。昨日の黒雲も、噴火によるもののようです。」
「外の様子を見たいんだが・・」
PCXはライブカプセルの横の部分を少し開いて、外が見えるようにした。その隙間から、キラは外を見た。確かに雨が降っている。だが、普通の雨ではなさそうだった。
ちょうど隙間の部分に雨水が入ってきた。それは、真っ黒で少し熱を感じる。
「これは・・・。」
「火山の噴煙が雨に混ざり、真っ黒な水滴になって降り注いでいます。少し酸性の強い雨です。」
「君は大丈夫なのか?」
「何の影響もありません。高温の熱水にも、強酸性の水でもライブファイバーは耐えられます。ですが、キラ様は耐えられないでしょう。目に入れば失明する恐れがあります。今しばらく、このまま耐えるほかありません。」
「オーシャンフロントはどうだろう?」
「直接降り注げば、かなり被害が出るでしょう。しかし、火山噴火は予見されているはずです。避けられる場所まで移動したと思います。」
「また・・離れてしまったのか・・。」
「いえ、大丈夫です。今朝方から、オーシャンフロントの信号をキャッチし始めました。それほど遠くありません。おそらく、噴火した火山の反対側へ逃れたのでしょう。この湾の奥深くに隠れているはずです。」
「そうか・・・。」
そこまで聞いて、キラは不安を感じ始めていた。PCXが信号をキャッチしたということは、今後、オーシャンフロントからの影響を受けやすくなるということになるからだった。

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