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3‐5 島影 [AC30 第3部オーシャンフロント]

海流が湾の奥に流れ込んでいるようで、PCXのライブカプセルは、海流に乗って湾の奥へ移動を始めた。
奥に向かうにつれて、火山の噴火音は一層大きく、ライブカプセルの中でもびりびりと感じるほどだった。しかし、大きく流れが変わったあたりから、雨も止み、日差しを感じるほどになっていた。

「フォルティア、外が見たい。」
「判りました。」
PCXがライブカプセルを解除した。

はるか後方に、噴煙を上げている火山が見えた。青空も見えた。
「このまま、流れに乗っていけば、湾の一番奥につきます。おそらく、その手前あたりにオーシャンフロントが見えると思います。」
フィヨルドのように深く切り込んだ湾、両側に切り立った山、いずれも火山のようだった。いくつかは小さな噴煙を上げている。

「見えました。前方の三角形の尖った山、あれがオーシャンフロントです。」

周囲の山々は、岩が剥き出しの荒々しい形状だが、一つだけ、まっすぐに天に伸び、緑に覆われた、ピラミッド状の山がある。
それは、キラの想像をはるかに超える大きさだった。
人工物とは思えないほどの大きさの島、まさか、これが大洋を自由に動き回るとは思えないほどだった。
以前に、PCXから、ユービックを介して、3D映像を見たことがあった。PCXは、周囲30km、最も高いところは500mと説明し、最大50万人が生活していたと聞いたが、その時はとても想像はつかなかった。
だが、今、目の当たりにして、それが現実のものであることに驚くばかりだった。
そして、それはとてつもなく高い科学技術力で作り上げられたものであること、そして、それを支配する者の力の大きさを想像し、気後れする自分に気づいていた。

「フォルティア、君がいたころと比べて何か変わったところはないか?」
「外観上の変化はありません。」
「そうか・・・。」
徐々に、オーシャンフロントに近づいている。
「フォルティア、影響を受け始めているのか?」
「今のところ、何も変化はありません。」
しかし、キラは気づいていた。
PCXの反応が徐々に機械的になってきているのだ。

「もう、オーシャンフロントでは、気づいているかな?」
「わかりません。」
「武器を用意したほうがいいかな?」
「不要です。」
「だが・・・」
キラがそういって、デイパックの中から小さなスクロペラム(銃)を取り出そうとすると、PCXは変形し、キラの体を細い紐状のライブファイバーで拘束した。
同時に、半球形から円筒状に変形し、一気の速度を上げて、オーシャンフロントへ向かい始めた。

PCXが、オーシャンフロントの支配下に入ったことは明白だった。
キラはこうなることを予期していたが、抗うすべはなかった。


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