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3‐6 PCXの集団 [AC30 第3部オーシャンフロント]

島までわずかの距離になった時、上空に、多数の球形が現れ、一見して、それが、ガーディアン・アンドロイドPCXの集団であることが分かった。
PCXの集団は、キラを乗せたPCXを取り囲むように上空に静止した。
しばらくすると、相互に通信を行っているのか、キラには理解できないような信号音と点滅する光を発すると、集団の中から2体がゆっくりと近づき、挟み込むようにぴったりと接合すると、上昇した。その前後をPCXの集団が編隊を組み、静かに、オーシャンフロントに入っていった。

オーシャンフロントの海岸部分は、人工島らしく、白く高い防波堤が周囲をぐるりと囲むように作られていた。そして、その防波堤の上部から海面までは優に20メートルはあるように思えた。

キラを取り囲んだPCXの集団は、いったん、オーシャンフロントの領域に入ったものの、地上には降りず、その場に待機しているようだった。
「どうなっているんだ?」
キラがPCXに問いかけても、何の返答もなかった。もはや、完全にオーシャンフロントに支配されているただとアンドロイドになっていた。
キラはどうにか、下の様子を見ようと身を捩ってみた。しかし、ライブファイバーの締め付けは強く、全く身動きが取れない。

しばらくすると、PCXの集団はゆっくりと地表に降りた。キラを乗せたPCX以外は、いったん人型アンドロイドに変形し整列した。特に武器は持っておらず、無表情に立っている。次に、キラを拘束していたPCXが、拘束をほどき、他のPCXと同様に人型アンドロイドになり、列に入った。
その段階で、フォルティアがどれだったか、見分けはつかなくなってしまった。

拘束を解かれたキラは、ゆっくりと周囲を見渡した。
そこは、オーシャンフロントの最も外側で、防波堤の内側だった。海の様子は見えないが、島にぶつかる波の音と潮の香りで判った。そして、周囲には何の建物も見えなかった。ただ広い空間だった。地面は硬質のガラスのような物体で作られている。小さな振動を感じるところから、内部は空洞のように思えた。島を支えるフローターなのだとキラは考えた。
「これから、どうするつもりだ?」
キラは目の前のPCXの集団に問いかけるが、何の返答もない。ならば、逃げてしまおうと足を動かすと、PCXの列がキラを制止するように動く。
ここに留めておくという指示だけが出ているのだろうか?
キラは、その場に座り込んだ。動けないならば、動かないまでのこと。ここに連れてきた以上、何かのアクションはあるだろう。目の前のPCXたちに聞いたところで無駄なことだ。相手の出方を待つ他なかった。
膠着状態が1時間ほど経った時、目の前のPCXの色が真っ白からブルーへ変化し、時折、黄色やピンク色に変化し始めた。支配者から何かの指示が届いたに違いない。
「立ちなさい。」
どのPCXかは判らないが、強い音声が響いた。続いて、列の後ろにいたPCXが次々に球体に変形し、宙に浮いた。半数ほどは、すぐにどこかへ飛び去り、キラの周囲には4体が残った。
「ついてきなさい。」
4体のPCXは同時にそう告げると、キラの前後を取り囲むようにして歩き始めた。
「どこかに連れて行こうということか・・・。」
キラはPCXに従った。
フローター部分と思える場所から、遠くに見える山の方角に進み始めると、目の前に壁が見えた。高さは3メートル程度だろうか、外の世界との隔離壁のように見えた。しかし、門や扉のようなものは見えない。
PCXはその壁に近づき、人型アンドロイドの腕を壁に近づけると、その場所が3メートル幅でゆっくりと開いていく。不思議な構造物だった。

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