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3‐21 ダモス [AC30 第3部オーシャンフロント]

せり上がってくるように、「茶色い塊」はキラの足元に迫ってきた。すると、岩を取り囲んでいた「茶色い塊」から、黒い糸のようなものが飛び出し、キラの体に巻きついた。四方から、同じように黒い糸が飛んでくる。次第に、キラの体は黒い糸に巻かれ、黒い塊になった。ちょうど、雲が獲物を糸に絡めてしまうような、そんな格好になった。身動きできず、キラは岩の上に倒れ、その勢いで、「茶色い塊」の中で転がり落ちた。
「茶色い塊」の集団は、は糸でぐるぐる巻きになったキラの体を乗せて、深い森の中へ消えた。

「茶色い塊」の背に乗せられ、移動を始めたキラは、何が起きているのか判らない。このまま、食べられてしまうのだろうか。そもそも、こいつらは何なのか?虫の要ではなさそうだった。運ばれる振動が、何か人の背に乗せられているように感じられた。
陽射しが時々顔に当たることで、森の中を移動していることは判った。しばらくすると、急に、振動や小さくなった。そして、薄暗い状態が続く。周囲から響く音で、何か狭い通路のようなところを通っているのではないかと感じた。
急に動きが止まった。そして、キラの体が床に卸されたように感じた。

「手荒な真似をして済まなかった。」
人の声がした。そして、体に巻きついていた糸がするすると解かれていく。ようやく、キラの視界が開けた。
目の前に、多数の人間が立っていた。そして、その真ん中に、キラたちと同じ、ライブスーツをきた大柄な男性が立っている。
「私は、ニコラ。ここに居るものたちの長です。」
聡明で穏やかな表情で自己紹介をした。
「私はキラ・アクア。ジオフロントから来ました。・・」
「ああ、数日前、PCXたちに連れてこられたようだね。」
「あの・・ここに居る人たちは・・?」
「我らは、ダモスと呼ばれている。森深く息を殺して生きてきた。先人類の子孫なのだ。」
「先人類の子孫?それが、どうして、森の中で・・。」
周囲を見ると、皆、ライブスーツを着ているものの、随分とやせ細っているように見えた。
「カルディアの亡霊に追われたのだ。」
「カルディア?」
「ああ、そうだ。オーシャンフロントを作り、700年にわたり、支配している亡霊だ。」
「創造主と呼んでいる、あの女性の事ですか?」
「見たのか?」
ニコラは驚いた表情で訊いた。
「はい、白い衣服を着た女性たちにタワーの中へ連れて行かれ、上部にある部屋で数日を過ごしました。その時に、短い時間でしたが・・・話しました。」
「話した・・のか・・・。」
ニコラはさらに驚いた表情を見せる。
「最上階のドーム状の小さな部屋で、彼女は白く輝く衣服を纏い、美しい女性の顔立ちをしていました。そして、オーシャンフロントすべての創造主であり、すべてを掌握していると。そして、それを成しえたのは、永遠の命を得たからだと。初めは、アンドロイドではないかと疑いました。ですが、目の前で、自ら腕に剣を立て、赤い血が噴き出すのを見せられました。確かに人間でした。」
「そうか・・・。」
キラの話に、ニコラだけでなく周囲にいた者たちも一様に驚いたようだった。
「本当にそんなことがあると思うか?」
「700年も生き続けるということですか?・・いえ、そんなはずは・・でも、彼女は確かに人間でした。」
「そうか・・。」

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