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3‐24 二つの血を受け継ぐもの [AC30 第3部オーシャンフロント]

「700年もの間、自分のクローンを次々に作りだしている・・ということですか?」
キラは驚いて訊いた。
「おそらく、そうだろう。君が会ったという創造主もクローンに違いない。だから、永遠の命を持った者なのだと言っているんだろう。」
そう聞いて、キラはふとフローラのことを思い出した。
彼女もカルディアのクローンだったのだ。海岸で見つけた時、幼子だったが見る間に成長したことからも明らかだった。では、彼女も寿命が近いというのか。
「PCXのライブカプセルでジオフロント近くの海岸に流れ着いた女性を見つけました。彼女は一切の記憶をなくしていて、フローラと名付けてやりました。あれも、カルディアのクローン・・・」
悲しげな表情で言うキラを見て、ニコラは慰めるように言った。
「ああ・・残念ながら・・そうだろう。カルディアは、100年近く前から、女性をライブカプセルに乗せ、海に流している。ここに居るPCXのデータから、それは、プレブの中から選抜されるようだ。これまでに戻ってきた者はいなかった。だが、奇跡が起こった。君たちが彼女を見つけたのだ。」
ジオフロントでも、彼女の発見を大いに恐れた。ジオフロント以外に人類は生存していないと考えていたからだった。だが、目の前に現れたフローラに奇跡を感じ、未来を感じた。そして、同時に、恐怖も感じていた。

「地球上のジオフロントやオーシャンフロントの生存者を探すためだったのだろう。」
「どうして、そんな必要があるのです。タワーの満ち足りた環境があり、永遠に続く命を得ているなら、そんなことをする必要はないでしょう。」
ニコラはキラの言葉にうなづいた。
そしてこう答えた。
「異常な事態が起きたのだ。」
「それは何でしょう?」
キラが再び訊くとニコラが目の前に居並ぶ女性たちを見た。
そして、小さな声で言った。
「ここに居る女性たちは、あと数年も生きられない。」
キラは耳を疑った。
皆、まだ若く見える。確かに、タワーで出会ったステラに比べればやせ細った者もいる。栄養状態の違いは避けられない。
「寿命なのだ。彼女たちの成長速度は異常なほど早い。そして同じように老化も進む。数年もすれば、老婆のごとき姿となり、急激に衰えてしまい絶命する。」
「クローンの限界とでもいうことでしょうか?」
「判らない。ただ、成長速度が速く、短命なのは事実だ。」
「それと、ジオフロントの人間と何か関係が?」
キラの質問に、ニコラは意を決するように答えた。
「ここには、ダモスの男とドロスの女性の血を継ぐ者もいる。その者は、他のものと比べ成長が早く、屈強な肉体を手に入れる。そして、寿命が長い。・・実は、私もその一人だ。」
「カルディアのクローンとダモスの血を受け継ぐ者・・・。」
キラは驚いて言葉を失った。
「二つの血を受け継ぐ者は、その屈強な肉体でダモスを守る役割を担うことになっている。PCXは、カルディアを守るためのプログラムがされている。私には半分、カルディアと同じ血が流れている。だから、PCXは攻撃しようとして混乱する。だから、両方の血を受け継ぐ者は、森や田園に出て、食料を調達する。時には、ドロスの住居に侵入し、生活に必要なものも手に入れる。そうして、我々ダモスの勢力は次第に強くなってきている。カルディアは、危機感を感じ、それに対抗するための道をジオフロントの人間に求めたのかもしれない。」


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