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3‐25 消去 [AC30 第3部オーシャンフロント]

キラは目を閉じ、天を仰いだ。
あの日、海岸でライブカプセルを見つけなければと後悔した。同時に、フローラの運命を嘆いた。今頃、フローラはどこでどうしているのだろう。おそらく、彼女は自分が何者か知らないに違いない。ジオフロントでの日々をどう受け止めているのだろう。
二人のいるセルにPCXが来た。
「ニコラ様、ドロスの住居で消去が始まりました。」
ニコラは顔色を変えた。そして、セルを飛び出して、中央の広間に走った。キラも後を追った。
中央の広間には、大型のモニターがあり、外の風景が映し出されている。
「これは?」
「外にいるPCXからの画像だ。さっきのPCX同様、廃棄されていたのを修理した。」
目の前に、ドロスの住居が見えた。
「何のための消去なんだ?」
ニコラが訊く。
外にいるPCXから返答があった。
「キラ様がいたドロスの住居のようです。」
「君が来たという記憶を消すためか・・・惨いことを・・。」
よく見ると、四方からPCXが囲み、何かを照射している。出口から女性が出てきたが、PCXの照射を受けて一瞬で消えてしまった。
「PCXは、人を傷つけないようプログラムされているんじゃないのか?」
キラが声を荒げる。
「確かにそうだが・・・いよいよ、カルディアが次の段階に入るのかもしれない。」
「次の段階?」
「古いクローンは次々に消去するよう命令されたのかもしれない。」
「それは、新しいタイプのクローンが生まれたという事でしょうか?」
「おそらく、そうだろう。君たち、ジオフロントの人間の遺伝子を手に入れ、新たなクローンを作りだす事が出来たのだろう。」
「では。プリムたちは・・。」
「わからない。だが、新しいクローンを作りだすために必要なはずだ。・・。」
「早く、彼らを探して連れ戻さねば・・。」
キラは、目の前の無残な光景を見ながら、いずれ、不要になれば同じように消去されるだろうと想像していた。
「何とか、タワーの中に入れれば・・・。」

一通り消去が終わったところで、ドロスの住居を取り囲んでいたPCXたちが引き揚げ始めた。
「あの住居は遠いんでしょうか?」
キラが尋ねる。
「いや・・・フロート内の通路を使えば、すぐだが・・。どうするつもりだ?」
今度はニコラが尋ねる。
「私は、タワーの中で最上部に招かれ、カルディアにも会いました。私の目的を知っていながら、最深部まで入れたのです。きっと、プリムたちと同様に、私の遺伝子も欲しいと思っているのではないでしょうか?」
「確かに、そうだろう。」
「では、もう一度、タワーの中に入る事はできるでしょう。おそらく、迎え入れてくれるはずです。とにかく、中に入らなければ、どうしようもありません。」
「だが、君一人、入ったとしても何が出来る?タワーの中はカルディアに支配されているんだぞ。部屋の中に閉じ込められれば終わりだ。」
ニコラは反対した。
「抜け出す道は判っています。タワーの中空部分を落下すればいいんです。今度は、途中のフロアに入り込みます。ここに居るだけでは、何も変わらない。」
キラの強い意志をニコラも認めざるを得なかった。

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