SSブログ

3‐27 ノビレスエリア [AC30 第3部オーシャンフロント]

ノビレスエリアの最上部に達したキラは、何としてももう一つ上部のプレブのエリアに行きたかった。
だが、通路は無い。その時、急に、中空部分を強い気流が流れ始めた。
吹き出しは強く、ノビレスエリアで走り回っていた女性の一人が、気流に飲み込まれ一気の上昇していくのが見えた。全身を覆う白い衣服が帆の役割となって、上方へ持ち上げられたのだった。
キラはそれを見て、自分のライブスーツの脇の部分を大きく引き伸ばし、気流の中へ飛び込む。予想通り、気流の力で一気に上方へ持ち上げられた。そして、難なく、プレブエリアに達することができた。

プレブエリアは静まり返っている。
中空部分を一周する広い通路、下層よりも明るい。壁がほんのりとブルーの光を発しているのだ。キラは注意深く、通路を巡る。どこかにドアがないか探したが、見当たらない。あの『白い部屋』の様に。壁が自在に開閉するようになっているのだろう。
偶然、前方の壁に開口部が出来、白い衣服の女性が出てきた。キラに気付いていないようだった。キラは咄嗟に女性の背後に走り寄り、後ろから羽交い絞めにした。
突然の事に、女性は、小さく悲鳴を上げた。すぐにキラが口を塞ぐ。
「静かに!手荒な真似はしたくない。」
女性は恐怖で震え、眼には涙を溜めている。
「女性を探している。最近、外の世界から戻ってきた女性を知らないか?」
女性は震えながら、首を横に振った。
「本当か?」
女性は本当に知らないようだった。
「いったい、どこに居るんだ!」
そう言って、プレブエリアを見渡した。
中空部分の上空から、赤い光が点滅しながら落ちてくるのが見えた。
目を凝らすと、球体に変形しているPCXの集団だった。キラが女性を拘束している事に反応したのか、上昇気流を掻き分けるように、降りてくる。キラは女性を解放し、何処か、隠れるところはないか、フロアの中を走る。しかし、明るいブルーの光を発する壁がぐるりと取り囲んでいるだけで実を隠せるところはない。すぐに、PCXはキラを包囲した。
「おとなしくしてください。」
集団で取り囲んだ中の1機のPCXが言う。キラは、二コラに渡された小さな箱-『イグニス』を思い出した。ライブスーツの腰のポケットに入っている。効果のほどは判らなかったが、これ以外に方法はない。
キラはポケットに手を忍ばせて、『イグニス』を強く握りしめ、PCXの前に突き出した。
一瞬、PCXの動きが停まったように感じた。
握りしめた指の隙間から、オレンジ色の光が漏れている。さらに強く握りしめると、光は、キラの手を透過するほど強くなり、周囲に拡散した。
するお、取り囲んでいたPCXは、白い光や青い光を激しく点滅させ始め、互いにぶつかり合い、ボトボトと床に転がった。
さらに、青白い光を発していたプレブエリアの壁が波打ち、薄くなったり厚くなったしながら、あちらこちら綻びが出来るように、穴が開き始めた。
壁に仕切られていた部屋の中にいた女性たちが、驚き、互いに手を取り、抱き合い、座り込んでいる。
キラの周囲のあらゆるものが狂い始めたようだった。その範囲は、かなり大きい。下層のノビレスエリアでも同じように壁が変形している。
キラは、この間に、通路を昇り、さらに上層を目指した。
まだ、『イグニス』は光を発し続けている。
いくつかのフロアを昇ったところで、「キラ!」と呼ぶ声が聞こえた。

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0