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3‐28 フローラとの再会 [AC30 第3部オーシャンフロント]

プレブエリアをぐるりと巡る通路の先に、白い衣服を着た女性が立っている。
「フローラか?」
カルディアのクローンである女性たちは、皆、同じような顔つきをしていて、すぐには判らなかった。
「キラ!キラ!」
そう叫びながら、その女性は駆け寄ってくる。そして、手を伸ばし、キラの胸に飛び込んだ。
「来てくれたのね。」
キラはまだ確信がなく、強く抱きしめることができない。探していたはずなのに目の当たりにすると本物かどうかわからない。
フローラを最後に見たのは、カルディアストーンを探す旅に出る時だった。あれから1年以上を経過している。記憶の中のフローラは幼子の面影を残していたが、時の流れとともに、すでに大人の女性になっているはず。
ニコラの話では、クローンは驚異的なスピードで成長する、ならば、フローラもすでに落ち着いた大人の女性になっているはず。だが、それが、どれほどのものか、判然としない。
「キラ、ここに居てはだめ!早く抜け出さないと!」
キラの胸にしがみついていた『フローラ』がキラの目を見つめ言う。確かに、そろそろPCXたちが機能を買う服して再び捕えに来るに違いない。
『フローラ』は、キラの手を引き、目の前の青白い壁にできた開口部から、部屋の中へキラを誘導する。
そして、部屋を小さく仕切っている壁を次々に抜けていく。
「どこに行くんだ?」
「この先に、外に抜ける通路があるのよ。」
最後の壁に大きな開口部ができた。その先は薄暗い。
「さあ。」
キラは『フローラ』の言葉に警戒しながら、薄暗い部屋の中へ足を踏み入れた。
がらんとした空間だった。
「ここは?」
キラは空間の中を見渡しながら訊いた。
「ここは、プレブエリアの最下層の、旅立ちの間と呼ばれているわ。」
「旅立ちの間?」
「プレブの幼い子が集められ、選ばれるの。」
「選ばれる?」
「そう・・・カルディアが幼な子の中から、旅立つ者を選ぶのよ。」
「旅立つって・・・。」
「海へ放出されるの・・・・私みたいに・・・。」
「何のために?」
「命を繋ぐためよ。カルディアは、オーシャンフロント以外に人類が居ないか、調べているの。」
「今も?」
「いいえ、私が、ジオフロントに到達したから、必要なくなったわ。」
部屋の中央部分の床が、円形に黄色く塗られている。
「そこが開くと、海へつながる通路があるの。ここで、PCXのライフカプセルに乗せられ、海へ向かうの。」
『フローラ』は悲しげな表情で言った。
そして、厳しい表情に変わって言った。
「さあ、キラ、ここから逃げて。カルディアに捕まればもうジオフロントへは戻れなくなる。」
『フローラ』は、創造主を何度も「カルディア」と呼んだ。そこには、カルディアへの憤りさえも感じられた。
ようやく、キラは目の前の女性が本物のフローラだと確信できた。
「フローラ・・本当に、フローラ・・なんだね。・・・無事で良かった。・・」
なんだか急に安心したキラは、その場に座り込んでしまった。
「ハンクやプリムたちはどこにいるんだろう?ガウラと約束したんだ。彼らを連れて戻ると・・。」
そう言って、フローラを見た。フローラが涙をこぼしている。


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