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2日目⑤あぢかまの里 [琵琶湖てくてく物語]

トンネルを抜けると、長い下り坂。
トンネルの出口近くに「矢合神社」がある。
春にここを通った時、境内に咲いていた桜が目に入り、思わず駐車した。道路からすぐに鳥居があり、石段を上ると本殿がある。大きな神社ではないが、そこにある桜は見事なものだった。ソメイヨシノではなく、淡い桜色をした枝垂桜だ。周囲の桜が咲き終わった頃に花を開く。歩いた時は真冬で、それが桜だとは気づかなかった。

その先は国道8号線と303号線の塩津交差点である。
今回の計画では、ここから、左に折れて、近江塩津駅でゴールになるはずだった。
先ほど、大浦を出発してここまで7km弱しかあるいていない。
「もう少し歩きましょう。」
妻が笑顔で言う。
確かに、まだ午後2時過ぎ。ここで終えるには少し早い。
だが、ここから、賤ケ岳方面に向かうと、最寄りの駅が無くなる。GoogleMapで調べてみると、この先でJR駅が最も近くなるのは、木之本駅だった。塩津交差点から木之本駅までは、7km。なんとかなるか・・。
道の駅塩津海道あぢかまの里で一息つく。
前から、この「あぢかま」とは何ぞやと思っていた。
ここの案内所で掲示されていたのを見て納得。
「あぢかまの塩津を指して漕ぐ船の名は告(の)りてしを逢はざらめやも」
と読まれた塩津の浜の枕詞「あぢかま」が由来だそうだ。
だが、やはり判らない。
そもそも『あぢかま』という言葉は何?
これは後日調べた事だが、「水辺で冬を過ごすカモ」のことを『あぢカモ』と呼ぶらしい。これ以上のことは判らなかったが、万葉集が詠まれた時代には、自然への造詣は今より深く、カモ一つにも、様々な表現があったに違いない。
現代よりも、大和言葉はもっともっと多様だったのかもしれないと思う。

ここで、GoogleMapを見る。
どうやら、目の前の道は新しいようで、少し東側に旧道がある。車の通りも少なく、歩くにはちょうど良さそうだった。
国道を横断して、西浅井郵便局から旧道を進む。
山に沿うように、街道が続いている。地形を見る限り、旧道より西側はかつては湖だったと思われる。それが証拠に、旧道の先に行くと、人家の湖岸沿いには石垣が積まれているところがある。対岸の陸地はコンクリ―ト製で、この場所が近年埋め立てられたことが判る。

旧道沿いを歩くと、面白いものを見つけた。
ここは、塩津海道、塩津港のあった場所で、琵琶湖最北に面する集落である。
大浦と同じように、丸子船の基地として栄え、多くの商家があったそうだ。
今でも、旧家屋が所々残っていて、その名残を感じられる場所に、小さな看板が掛けられている。酒蔵や米蔵、宿などがあったようで、古めかしい文字で説明文が書かれていた。
ほんのわずかではあるが、そうした営みを後世に伝えようとしているのには感心した。近年増えている「シャッター街」で、現代アートで彩られているところも一興だが、こうした古い町並みにちょっとした看板を置いて、往年の姿を想像させる趣向も面白い。

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